幾らか肌寒さも感じる台風一過の日曜日、行楽の車は心配するほどでもないが、空模様が気に掛かる。雲間から覗く青空もないではないが、午後の予報は雨と出ており、雨粒が落ちてきても驚くような天候ではない。北集落のあぜ道には、朝も早くから大勢のカメラマンが群れをなして撮影会に余念がない。
北集落を過ぎると一旦集落が途切れる。山鳥やトビが飛翔しても、ごくあたりまえのことである。目の前に飛び降りたヤマガラの番がある。車の進行に合わせて当然飛び立つものだと思うのは普通だ。と、二羽は飛び立つのが遅れて、一瞬車の下に入ったように見えた直後、フロントとサイドに分かれて飛び上がった。
フロントの一羽は減速した車のガラスにゆっくり身体を打ちつけ車の下に消えていく。路肩に車を止めて戻る上空には、早くもトビが弧を狭め、獲物を狙う体勢にある。威嚇の声に、ゆっくり上昇に転じたトビは、どうやら諦めて飛び去った。道の上には蹲る小さな固体が一つ。手に持つと、柔らかな温かさが伝わってくる。しかし既に鼓動は停止、僅かな時間で硬直が始まる。
衝突の一瞬間、それはヒナのようにも思われたが、成長した個体であって、どこにも傷などは見られない。道脇の高みでは、残された一羽が絶えず鳴く。今日ここを通らなければ、少なくともここで一命を落とことは無かった筈で、なんとも可愛そうなことをした。中山谷山への尾根道の傍に埋葬した。
尾根を登る道すがら、小さなものが直ぐ傍の潅木をチョロチョロする。日本リスである。それも、痩せているようにしか見えず、人の姿を見ると同時に姿を消す筈のリスが、ほぼ同一の速度で尾根を登っていくのである。林床には、お目当てのクリ、ドングリの一つだに転がっていない。
尾根を上り詰め、目の前に、秋色に染まる中山谷山のピークが迫ってきた頃ポツポツきた。低く蟠るような紅葉の山並みを眺めて、隣の尾根に乗った。雨が追いかけるようにやってきて、下るばかりの林を賑やかに叩く。
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