■ 京都西山・芦見谷〜愛宕山
・・・・2010年8月15日
2010.8.17

今にも雨粒が落ちてきそうな空模様、気になるのは雷である。越畑集落からは、西の空一面に広がる真っ黒い雲。ならば暑さも、と思ったら大間違いで、歩けば額からは大粒の汗が滴る。乾いた山道の傍を、清冽な水音を立てて流れる芦見川−越畑疏水の勢いは、何時にも増して激しいものであった。芦見峠に至る頃には濃い雲は概ね消えて、水色の空から陽射しが漏れるようになった。

峠を降りて芦見谷に降りると勢い良く流れる芦見川。白や黒い川底の小石がとても綺麗である。歩き出して直ぐ、川の反対にあるユリ道の崩壊が目に飛び込む。林道の至るところが崩壊し、通行止めの標識もある。左側斜面の崩壊土砂が林道を越え、川に達する処で、引き返したMTBの轍を見つけた。

流出した木々の間を縫って進むに連れ、川は一層激しく土砂を流し、綺麗になっている。あたりを見渡しても人の姿は無く、水に入ろうかと思うと日が蔭る。そんなことを何度が繰り返す裡に林道の終点、流石に暗い林の中で水に入りたいとは思わない。川岸に続くルートであるとはいえ、これまで水に浸かった痕跡のない辺りまで、流された後の岩が綺麗である。

竜ヶ岳出会いも、見過ごしてしまうほどの変わりようだ。今日はこのまま芦見谷に沿ったユリ道を歩くことにした。竜ヶ岳の斜面が嫌に辛く見えたのだ。暗いとばかり思われた谷も、かなり明るく感じる。雨が降ったばかりに見える谷は、流れもあって、時折差し込む日差しを反射する川面は、これだけでも十分鑑賞に値する。

誰もいない林の中を、川に沿って黙々と進むと、湧き水の溢れる地点を境に川が終わる。ここでも暫く休みを入れて、急斜面のジグザグ道を上り詰め、ふと道脇を見ると、妙齢の、多分おばさんが一人シートを広げて自若としておられる。余りに静かに座っておられるので、声を掛けるさえ憚られ、振り返っても微動だにしなかった。

今日始めての人との接近遭遇を経て愛宕道に出た。少なめではあるが、それなりの人達と挨拶を交わしつつ、愛宕神社まで。神社前には家族連れやアベック、団体さんなど、結構な人出があった。缶ジュースを買いながら、高いな、と呟くと同時に、社務所のおじさんが顔を出した。高けりゃ買うな、と云われそうな気配である。昔はビールもあったのだから。

じめじめした雨上がりの境内で、ジュースを飲みながら、ザックに着けたアイテムが無いのに気が着いた。どうしても要るわけではなくとも、無いと寂しい。で、帰りも同じコースを辿ってみたが、ひとっこ一人居ないルートの何処にも、失ったものは見つからない。林道から空を仰ぐと、乾いた綺麗な青空が広がり、どうやら前線に伴う湿った空気は行ってしまったようである。


CGI-design