昨日は一日雨が降り続き、宮川の小さな川も、小川らしくないかなり激しい流れである。時々パラパラ落ちてはくるが、何とか持ってくれるだろう。こんな時の近場の山の第二段は半国山である。川面には白い煙、川面を舐める風が冷たくて気持ちが良い。
風は相当に強く、嵐のような日である。
宮川から金輪寺に至る道には、池から溢れた水が流れている。ところが、嘗てはこの時期に必ず居たはずのサワガニやカエルや、ヘビ等の姿がまるで無い。苔むした路面を注意深く探しながら、ただの一つも姿がない。これは両生類や爬虫類や、はては虫の類まで、相当に減少しているのではないかと思っても止む終えない。事実は一体どうだろう。
いつも顔を洗う山からの細い流れは、上流の側溝を溢れた水と合わさって、数倍、それ以上の流量がある。側溝を流れる水でもかなり冷たい。彼方此方から噴出する水を見るにつけ、山に降り注いだ雨は一体どれくらいであっただろうかと、一抹の不安が無いでもなかった。
金輪寺への道を外れて登山道に入るとやっぱりここも川である。
湿度は相当に高く、ほんとに水の中を歩くようで、立ち止まると忽ち頭から腕から滴る汗。枯れた松ノ木が登山道を塞いでいる。倒木を越えて進むと同じような倒木が何箇所もあった。相当に強い風が吹き荒れたのだろう。それにも増して山肌から流れだす水の多いこと。東尾根に乗ってからは風は幾らか落ち着いた。がしかし陽射しは全くない霧の中である。
暗い山を更に暗くする植林地を抜けて最後の斜面を越えると、霧の流れる無人の半国山ピークである。強い風を避け頂上モニュメントの後ろで小休止、冷えてないゼリーがただ甘い。と、そこへ20代位の肉付きの良い青年が一人、誰もいないだろうと思って驚いたらしい。
にこにこ顔の好青年である。
暫く風に吹かれたら身体が冷えた、そろそろお暇を、と青年を見ると、殆ど上半身裸で身体の火照りを覚ましている。空は相変わらずの黒雲一色だったが、どうやら雨の気配は無いらしい。道中では、アマガエルほどは見なかったが、ガマガエルのおちびさんが二匹、大慌てで逃げていくのがなんとも楽しい見ものであった。
|