■ 北摂・剣尾山〜横尾山
・・・・2010年06月20日
2010.6.21

近場の剣尾山だが、登山口の直ぐ上からは雲の中で、車を止めた玉泉寺から歩いて暫くすると、下界の視界は悉く雲の下のこととなった。こんな天気でも、登山口横には数台の車がある。まるで水の中を歩いているような皮膚感覚、流れる汗は乾くこともなく、流れ落ちるに任せ、淀んだ空気は多少ともそよぐことはない。大日如来の岩絵の前で汗を拭きながら小休止、目の前の岩の上には見えない中空を睨んで佇む男性が一人。

同じく岩の隅ににじり寄り、同じポーズをしてみたが涼しくない。立ち止まると腕からも汗が噴出してなお苦しい、とっとと行者山まで行くのがこの場合一番楽だろう。登山道のいたるところに米粒のようなネジキの花と、小さな几帳面らしいソヨゴの花が撒き散らしてある。行者山まで来ると、僅かに待望の風があった。だいたいに体温の調整が下手なのか、人の数倍汗をかく。

体が冷え始めるとまた動けなくなるほど冷えてしまう、ちょうど良いところが難しい。再び歩き始めて直ぐ、攻撃的な悲痛なホオジロの声が響く。直ぐ下の藪から聞こえてくるのだが、詳細は分からん。ながながと泣いているので、恐らく緩慢な敵がいるのだろう。とすればヘビの他にはない。助けてやりたいのは助けたい、しかし近づけば、ヘビとの共同作戦になりかねない。

何時までも泣き止まないホオジロの声を残して再び水の中、下りのご夫婦らしい二人は随分元気そうである。北側斜面の巻き道に入ると更に暗くなった。今にも雨粒が落ちてきそうだ。雨ではなくても、枝からの雨粒は絶えず降り注ぐ。平坦になるあたりの道端に、黄色いモミジイチゴが沢山あった。何粒か食べてみたが未だ酸味が強い。それでも何もないより気が晴れる。

赤い涎掛けをした六地蔵の前まで来た。どこか遠いところに来たような、錯覚を思えるところである。後ろの方で、随分賑やかな声がする。野外研修センターの活動があるようだ。続く月峰寺跡はまた随分綺麗になった。山頂からの雫を集めた井戸には、冷たい綺麗な水が流れていた。汗で濡れたタオルを洗って顔を拭いた、ひんやりと気持ちが良い。

山頂はまたなんと賑やかである。軽登山靴を履いた高校生位の集団が凡そ30人ばかり、これから到着する集団を併せると50人位にはなるのだろう。山頂端の岩の上で暫時の小休止。野外学習の声が、いずれが生徒で先生か、耳を澄まさなくとも良く聞こえる。横尾山へのルートは、数年前までは笹薮を漕ぎながら歩いたものだ、が今は枯れて短く折れた笹の残骸である。

そろそろ回復期にあるのか、芽をだしたばかりの笹が地表を覆い始めた。負けまいとするイワヒメワラビにも勢いがある。この勝負、今年はどうなるのか見てみたい。横尾山への急斜面に差し掛かったとき、俯いて、殆ど腰を折った姿の女性が一人、凄い勢いで追い越していった。その後へ、数名のおばさん登山隊が現れたが、これは結局追い越すほどの闘争心を持ってはおられなかったようである。

横尾山からトンビカラへ、ここで暫くボーとして、長く感じる尾根道を下った。咲き残りのモチツツジとネジキ、ソヨゴの花に加えて珍しい花も幾つか見たようである。


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