■ 京都西山・竜ヶ岳
・・・・2009年02月15日
2009.2.16

すっかり温かくなり、越畑の集落を抜ける頃には4月の中ごろのように感じているのを訝しく思いながら、いかに温暖化が深刻であると報道されようとも、気持ちがいいのは如何ともし難い。集落の古い石垣にはオオイヌノフグリの青い小さな花があるだけで、季節を忘れた植物は他には見えなかった。しかしオオイヌノフグリが脳天気だと断じている訳ではない。

芦見峠まであるくと汗が身体全体からほとばしる様に流れる。地蔵山出会いを見送り、本来なら氷の季節の芦見谷に降りた。風が強く陽差の殆どない真冬の谷底では雪と氷しか知らない。今日は雪も凍りもなく、木漏れ日の中は昼寝も出来そうな温かさである。犬2頭を散歩させている大阪ナンバーのおっちゃんがいた。

雪解け水と昨日の雨で3倍くらいに増水した芦見川は、あちらこちらで小さな滝を作って流れていた。まだまだ硬い冬芽が多く、見るものも少ない。地蔵山と竜ヶ岳の間を滝谷が流れる。滝谷が見えると見上げた位置に竜ヶ岳の西尾根が急峻な姿を見せる。今日は岩場の多い、トレースも殆ど無い西尾根を登ることにする。雪がないので夏山と変わらない。

谷川を渡渉、直ぐに石楠花の多い尾根をよじる。今日は右膝が多少痛むので、出来るだけ左足と腕を多用しながらの登りである。むかし初めて登った時の高度感は相当なものがあった。とくに5mほどの岩場を乗り越すときなど、近くに適当な木の根さえない急斜面で、けっこうびびりながら登った。このあとも細い崖状の岩場が続き、枯れた根っこを掴まないように注意しながらののぼりである。

やっと斜度が緩むと左側の樹林が明るくなり、同時に石楠花や檜に変わり、ツツジ科の植物の林に換わる。すぐに小さなケルンのある竜ヶ岳ピークが現れ、少し霞掛かった京都市内が広がる。振りかえると綺麗な冬枯れの林を纏った地蔵山のなだらかな稜線が美しい。気温は8度、汗が引くのと同時に少し寒い。傍のベニドウダンツツジの枝先には枯れた昨年の葉が残っていた。

ピークを降り、すっかり笹が枯れてしまった緩やかな尾根を愛宕山へ歩いた。笹が無いので、少し小高いピークからは全方位の遠望がある。北側の眺めは中々素晴らしいものであった。戦前から昭和30年頃まではスキー場があったのだが、全貌を表すと雪さえあれば確かに良いところだ。

樒ガ原からの車道出会いから、ぶらぶら車道を歩いた。車道といっても、僅かな距離に標高差600m以上もあるので、驚く程斜度がある。雪でもあった日には容易に下ることもできない。かざりを全て外したジープに結構大きな板を何枚も積んで登るのを目撃した事があるが、音の割には僅かしか登っていかない。大変なことである。

僅か前には6人ほどのパーティーが歩いていた。全員良いお年の男女で膝が辛そうであった。辛い道を降りると樒ガ原の集落にでる。そこでもカメラ片手に、未だ咲かない梅などの撮影に余念のないおばちゃまがおられた。愛宕山への道に関心があるようで、もしかしたら歩いて登ろうなどと考えていたのだろうか。途中で大汗をかきながら登ってきた軽装のおっちゃんもいたから。

府道をゆっくりあるきながらモズの番を観察した。この数日は確かに温かかったし、今日は春半ばを思わせる日差しもあったが、動植物にはまだ春は遠い。交互にくる寒い日と暖かな日の総和が一定以上にならないと春としないそうである。


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