温かい空気の流入で、辺り一面深い霧、どこまで行っても霧の中だ。数日前までの寒気に比べて温かいので、外の気温は3℃である。20℃近くまで上昇するとは、この時点では予想の他であった。信号の先の電柱に、明日のセツブンソウ祭りの案内が立つ。細い橋を渡ると道横に止まるダンプカーが数台、スプリングエフェメラルとは凡そ不似合いな光景だ。
生き物ふれ合いセンターの駐車場に車を止め、支度の間に職員の方が来られた。烏帽子山ですか?、と聞かれはしたが、帰りの報告については言及は無い。平和が戻りつつあるらしい。この霧の中、開花はどうだろう?、と思いつつセンター前の保護地に移動。そこは、早起きして遥々やってきたハイカーへの、気遣いに溢れる場所であった。保護地・近傍の林、入口にほど近い道の上、そこに芽を出す全てのセツブンソウが待っていた。この最、一部の例外は省いている。
林の中、道の上の群落も、やや個体数を増やしている。朝露に濡れた花には透明感が出て魅力がある。もう少しの辛抱かな。観察を終え、センターの水槽に棲むお魚を見て、例年の様に裏山に延びる階段を登る。辺りはほぼ藪状態だが道だけは掃除が行き届いている。今なら生き物とふれあう事もやぶさかでは無い。夏場のふれあいは出血を伴う激しいものだ。未熟ものには敷居が高い。
防獣柵を越えた先の林床に植物は無い。降雪によりお山を降った鹿の痕跡は多い。鳴き声もすれば、2・3頭で走る姿も度々目にした。植林地の下は凍えるほど冷たい風が吹く。落葉樹に比べ、カナダ杉の下では温暖化の抑制効果の大きい事を発見した。でもやはり、明るくて温かい冬枯れの林が望ましいのは否め無い。
急斜面を登り切ったところが烏帽子山、戦国時代の城跡である。砦くらいの広さではあるが「烏帽子山城址」と標柱にあるから城跡である。福知山では「丹波富士」と呼ぶそうだ。光秀に縁があるのかどうかは情報が無い。「麒麟が来る」のお陰で登山ルートにロープが着いた。光秀はやはり名君である。
降りは、雪の着いた細尾根の古道を歩いて梨木峠に降る。ザレ場のマンサクには花があり、トサミズキは開花寸前、が来週は再び寒波が来ると云う。戻ったセンターは暑かった。朝にはむしろ繊弱に見えたセツブンソウ、温かい日差しの中では男の子ように逞しい。 |