■ 鈴鹿・御池岳 ノタノ坂〜御池
・・・・2010年04月04日
2010.4.5

小又谷入り口の駐車地には既に1台の車がある。伸びやかに広がる御池川の上空には、重い雲が空を塞いで天気は今ひとつ。水溜りには氷が張って、朝方の冷え込み具合が分かろうというものだ。

林道を歩き始めて間もなく、アズマイチゲの小さな葉が顔を出している斜面。少ないながら毎年一輪か二輪の花を見せていたのだが、今年は未だに花が開かない。

傍のミヤマカタバミは開花はしていたが、あいにくの天気で閉じたままであった。谷川の傍には満開のアブラチャンが今を盛りである。傍には沢山の花をつけたフサザクラが控えていた。中電の鉄橋を渡り、崩れた斜面にハナネコノメの小さな朱が僅かに残っていた。

峠までは結構キツイ登りである。往時の苦労が偲ばれるというものだ。峠に着くと涼やかな風と開けた鈴鹿山脈の展望が疲れを癒し、見晴かす下方に我が村が見えた時の安堵はどんなだろう。今日は少し風が冷たい、山脈の上には黒くもが掛かり、藤原から御池に向かって霧が流れている。

それでも、ここから見える茨川、治田峠に続く細い道、峠越しに見える伊勢平野への展望は、流石にこころ和むものがある。

中電の巡視道に従い、鈴鹿主稜線に沿って高度を少しづつ稼ぐ楽なコースである。ゴロ谷あたりから一気に上り詰めるコースなどと較べると、殆どハイキングコースと云っても良い。ハイキングコースでも、左右に開ける展望は一流であろう。

真の谷下降ルートを越えると、イワウチワの繁茂する岩尾根らしいところもあって中々楽しめるコースだ。

ところがイワウチワの花が一輪も無い。葉は萎れたり枯れたり破けたり、相当に痛んだ状態である。3月末の荒天によるものだろうが、今年は駄目かもしれない。背の低いブナが顕れて直ぐ、右にテーブルランドが迫ってきて、平坦になったら土倉岳のピークである。
目の前には東のボタンブチが聳えていて、も少し優しい迎え方はないものかと不平が出たりなどする。

鹿のメインストリートであるらしい道が、黒々とぬかるんで御池の上甲板まで続いている。今年は鈴鹿でも雪が少なく、鹿には過ごし易かった筈だから、数が増えた結果かもしれない。鹿道を避け、歩きやすそうなところを探して登る。バイケイソウはまだ芽を出すか出さぬかの状態である。

テーブルランドに上ると直ぐ、東のボタンブチから大きなザックを背負った二人組が顕れ、土倉方面に下るらしい。歩きやすくなった笹原を、ボタンブチ方面に向かって歩くと、思いがけないところに人影を発見する。アホな事を音声にしようものなら、何処で笑われるか分かったものではない。ところで、ボタンブチとは何の事だろう。気安く使っていても、その由来をまるで知らない。

ボタンブチ傍の穴の中は既に6名ほどの男女が使用中、風が強いので、火を使うには物陰が必要だ。ボタンブチ辺りをうろついて、ピークを越え東の斜面に移動しても、名残の雪はあっても、風を遮るものが無い。天候は持ち直したようで陽射しが漏れる。日差しが戻ると荒涼とした山頂世界が、暖色に染まり一転温かく感じる。

融け残る雪の傍で昼食を済ませ、痛めた膝を庇いながらT字尾根目指して急斜面を下った。下るに伴い空は愈々晴れ渡り、T字尾根の石楠花の枝を払いながら振り返る御池の上空は深い青空である。右側を植林地が占めながら、尾根筋に僅かに残ったブナの林が美しい。もう少し多い目に残しておいたらさぞ立派な森であっただろう。

綺麗に間伐された杉の林を下降、林道の手前で見た御池川の緩やかに蛇行する様子、陽射に煌めく川面の様子は、春と云う字を連想させた。温かいのがやっぱり一番。



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