「ここから先私有地」の手前に車を止めた。ー2℃の路上に出ると、散髪された梅の木の枝が綺麗に積上げてある。この枝は、この先一月もすれば花を着ける。植物の偉いところ。若者が1人、日のさし始めた道を谷に向かって歩いて行った。バリカン禿から始めるべく、西尾根に向けて池まで降る。池の周りは日が指して明るい。雨が無いので水が少ない。池の浅瀬は岩場が透けて見える。
大坂山も近頃は少しは知名度が上がったようで、踏み跡が明瞭で藪が無い。バリカン禿の上から東を向くと、南尾根に人影が2つ。やや先行しているようだから彼らが露払い。先ずは298ピーク、彼らの姿は次のピークにある。数曽寺谷を隔てた大坂山の形が良い。振り向けば、点々と続く市街地の先に、明石大橋のケーソンと淡路島。これはこれで良い眺めだが、アルプスに並ぶ山並を鑑賞するなら振り返ってはいけない。次回はここへ、直接突き上げる尾根から登りたい、と思いながら果たせずにいる。
急斜面を降ってお次はキレット、徐々に角が取れて降りやすくはなったがお助けロープは有難い。ここからは登り、気温は氷点下だが風が無いので熱が溜まる。熱を溜めるべく、上は5枚を重ねているから当然だ。暫くぶりの大汗で錆を落とす。気持ち良く歩いて鉄塔の下、ここでザックを降ろし、冬枯れの谷を見下ろし小休止。数曽寺谷も良いが廻谷方面も捨て難い。
さて、と腰を上げると大坂山バットレスに人影が2つ。彼らは早い。峠まではかなり厳しい降りだが、降りは得意であるから問題無し。降った数曾寺峠に人影は無し、コシダのルートを大坂山へ向けて登り返し。コシダの藪を抜けるとバットレス、北岳ほどの規模になるなら大岩壁になるだろう、故にバットレスで良い。冷たい微風の吹くバットレスを過ぎると不人情な藪道が続く。見上げたピークは偽ピークで本物は2つも先、岩もあればウバメガシの藪も煩い。謂われなく、反省のポーズを強要される尾根である。
上の方で熊鈴が聞こえた。よろめく姿はよろしく無い、居住いを正して岩の上でお出迎え。涼し気なお顔の男性であった。そりゃ、降りは楽でしょう。偽ピークを降り登り返して階段岩を登ると北尾根に新設ルートができていた。次の課題。課題ができると不思議に元気が出る。回復した元気とともに無人の大坂山ピーク着。最高峰は形は良いが遠いな〜。エネルギー補給は前衛の温かい岩場と決めて直ぐに下山。踏み跡はより明瞭になってはいるが、妙に滑り易いルートになった。何でだろう?。 |