いつもの如く、樒ヶ原の駐車地に車を止めて空を仰ぐと寒い。前線のもたらした寒気で流石の夏もそろそろエネルギー切れが見えて来た様子。しかしこの程度でまいる山ビル様ではないだろうから今日も水尾まで降っての周回コース。あぜ道を彩るヒガンバナは今が最盛期だ。この花の緻密な構造には驚くばかり。技巧において、この花に勝るものは恐らくあるまい。目指したものはなんであったか、お話しができれば聞いてみたい。
気温は15℃で秋らしいものの、色付き始めた木の葉はほぼ無い。高山でもなければ未だ盆を過ぎた頃と同じである。よく見れば、1部の柿の葉に紅葉らしき色がチラホラ。1ヶ月もすれば初冬の風が吹き始める。植物も忙しい事に違い無い。
水尾までの長くて暗い、しかし静かな府道に時折自転車が通る。日本人に混じり、東南アジアらしき顔もあれば白人の顔もある。沿道にはツチグリくんの集団だって顔を出す長閑な道だ。国際色豊かな道を2時間も歩くと水尾の集落、お日様が参加されて暑くなった。水尾の柚子はまだ青い。集落入口付近に咲くカリガネソウは数を増やして元気が良い。清和天皇のおわします辺りも何やら和やかな様子に映る日だ。
さて、ここからは愛宕神社に向けて急斜面の登り返し、樹林の道には陽射しが少ない。汗がポロポロ落ちる斜度の厳しい道ではあるが、低い気温の中で案外に軽い。降って来られるのは人のみに非ず、渡りの季節を知ったアサギマダラはひとまず水尾で食事らしい。人の声が聞こえてくると表参道出合である。ひところに比べて人波が減った様に思うのは天候の所為だろうか。
水尾出合からの黒門は遠かった。項垂れた方々は気の毒である。気温が少し高いと同じ輩になり果てる身である。境内に着いて先ずはエネルギー補給。心地の良い木製ベンチを探して白人のアベックがウロウロ。シートを持たない者の嘆きの色。
今日は遠くの眺めが非常に良い。渡月橋が見え金閣寺は眉唾もの、大津の街並から比良山系、伊吹山地に鈴鹿の山並、冬でもこんな日は珍しい。単眼鏡などを使って暫し覗き見の時間。様子を見ていた白人アベック、もどかしそうに、展望地に降って行った。脚は長くて背はスラリ、しかしシートと双眼鏡くらいは携行したい。 |