■ 京都亀岡・行者山
・・・・2024年09月07日
2024.9.8

亀岡の郊外、田園の中の道は大変に狭い。ひたすら獨鈷抛観音(とこなげかんのん)目指して森が近付いた。しめた、ここなら止めても怒られまい。広めの路肩に車を止めて、観音様のおわしますお山を目指す。地図では明らかな破線道、よもや車でも行かれるなどとは夢にも思わないから、陽にあぶられながらのスタートである。朝とはいえ既に30℃に近い。側溝の水は、小さな山域に端を発するものとしてはやや多いめ。夏草の向こうは何かいな?、と覗いた藪の中に隠れた白い豹、肝を冷やしたのは事実である。白いパンサーが身を潜めていたとしてもあり得ない事では無い。上手に出来た彫刻で助かった。

大きな防獣柵を開けると暗い谷間に舗装路は延びる。次回があれば絶対に車、と沸々歩く傍らに「朝霧藤左衛門の塔」などと怪しい碑が立っている。何しろ寂しい谷底で、踏み跡は急斜面の暗い樹間に消えている。暑い最中に犯すべきリスクでは無い。これは黙殺して、暫く歩くと左手の林床が妙に青い。これは面妖な、苔にしてはちょっと大きく、ヒカゲノカズラに似た形ではあるが、青く光るようなものは初めて。辺りを見回しても妖怪の出現は無い。調べたところ、帰化植物の羊歯と判明した。あ〜恐ろしい。

名称を分析してみると、目指す観音様は獨鈷を放り投げた観音様、獨鈷は密教の法具である。獨鈷を用いて妖怪を屈服させた記述を読んだ事がある。故に、獨鈷を捨てる事は妖怪の跋扈を許す事に等しい、のでは無いか。などと沸々、思っている間にお寺に着いた。けっこう大きなお寺で、拝見させて頂きはしたが、観音様の姿はない。大変に暑いので、先に進もう。

お寺の右手から北に延びる舗装路を歩くと行者山の登山口、小さな看板の立つ峠である。舗装路に分かれて、山道を登ると堂徳山に着く。文字は異なれども道徳を説くお山だ。有り難く手を合わせよう。山名プレートの横に、熊鐘のある、樹液臭の漂うピーク、熊鐘は当然熊を想定したものだが、近頃この界隈での目撃情報は知らない。再び活躍する様な事にならなければ良いのだが。観音様にお願いしておこう。

今日は暑さが酷く応える。よもや妖怪のなせるところではあるまいが、尾根には涼しい風があって幾らか元気を回復した。行者山へ向って緩やかに降下中、単独の男性が登って来られた。奇特な人は何処にでもいる。登り返して行者山、暗い、樹林に覆われたピークで、もとより展望などは眼中に無さそうな作りだ。今日のところは展望より木陰、エネルギー補給の間に奇特な方がもう一人お出でになった。どうやら直ぐ下の方にも気配がある。


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