■ 鈴鹿・御池岳
・・・・2010年03月20日
2010.3.23

鈴鹿は暖かくなるととても行き難いところになる。5月にもなるとヒルの行動を予測しながら行き場所に窮することになり、愛知川の川原を歩きながらもヒルに苛まれる。結局安全な場所は何処にもない。行くなら今のうちに行くべきで、今のうちに行きたい所は行っておこう。で、たった3連休にも関わらず、大渋滞の高速に呆れながらも、未だ開放されないR307のゲート前に車を止めた。

御池谷のルートはそれ程芳しいところであるとは思えない、植林地ではあり谷はごろごろ石で崩壊状態、にも関わらず既に数台の車が止っている。道路わきの斜面に生えたフキノトウは大きく成長した花をつけていた。今日のところは陽射しもあって、陽だまりの中は温かい。壊れたような砂防ダムを越えて谷を詰めると真新しい立て札が行き先を示している。

谷を詰めると鈴が岳、鞍掛尾根支尾根を辿ると鈴北岳とある。雪が無いのでかなり歩き易い、植林地でなければ本来明るい林には、今日の陽射しも少しも届かない。大分成長した檜に換わって暫く、やっと明るい落葉樹の林になった。目の前には鞍掛尾根、遠くは霊山までが視界にあって、伊吹山は殆ど識別不能である。

尾根ルートには融けて流れる残雪が抉れた登山道に残っていて、泥濘の中に先行者の足跡が幾つか認められる。風には多少の冷たさも混じってはいるが、陽差の中では温かさが勝っていた。鈴北岳ピークからうねうねと広がる御池の林を伺うに、姿の見えぬ登山者が少なからず潜んでいるらしい気配がある。日本庭園を目指して足を踏み出したところで単独女性と遭遇した。

ヒルコバのフクジュソウを楽しみにきたらしい。日本庭園の中を颯爽と歩く二人組が登ってきて、やっぱりヒルコバ方面に下って行く。人気の無い日本庭園の中は風が抜ける。風が抜けても温かいので、ついでに融け残る雪の上に足跡を残して苔の上で休息とした。ホオジロの鳴き声が聞こえる、ゆっくりした様子ではなくて寧ろ忙しいそうにも感じられる。

休息の後、見上げると雲行きが怪しい、一面の青空は、今は所々に僅かに見えるだけとなった。一番近い池を見たあと谷に降りてヒルコバを目指した。しっかりした雪が残って歩きやすい、そろそろ黄色い光でも、と見上げた斜面に3人の女性が昼食中、この辺りからはフクジュソウの群落がずっと続き、尾根を越え、露出した石灰岩が切れるところで花も消える。

一面の花を踏まないよう、岩に腰掛けて昼食。虹彩を放つ金属的な花弁の横に、ボツボツと芽を出すバイケイソウの多さ。まばらになった花を追いかけてヒルコバへ、そこへ男性が一人、鈴ガ岳方面から現れた。伊勢尾辺りから始めたものと思われる。鈴ガ岳の山腹に足跡は無いのだ。さて、これから鈴北まで戻ったものか思案のしどころである。

悪天候までの崩れは無いにしても、更に良くなろうとは思われないし、丸山あたりまで行く気も既にない。少し早いが下ることにしてふと雪面を見ると、急斜面に真っ直ぐに残るシリセードの跡。真っ黒な土が透けて見えるほどに浅い雪の上を滑るとは、なかなか見上げた根性の持ち主である。その後も雪が現れるとシリセードの跡は続く。

雪も無くなった右側に植林の続く斜面には、ところどころにフクジュソウの黄色い花が今を盛りに咲いていた。それはずっと下方まで続き、嘗ては辺り一帯に繁茂していた事の証左であって、この先、人の思惑が頓挫するのを待つ、彼らの失地回復の希望を見るようであった。果たして現実はどうなるのだろう。


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