■ 両白山地・別山
・・・・2024年06月08日
2024.6.9

皆様の山行記を拝見していると見た事のない花の画像が上がっていた。全ての花を生で見るなどと言うのは不可能だが、画像などで1度くらいは見る機会があるものだ。ところがその花は嘗て画像でさえ見た記憶がない。撮影地はチブリ尾根、別山への登山ルートで目下別山は課題として残るお山、動機は違えどこの花を見に別山へ行きたい。睡眠時間を相当削って、着いた一ノ瀬ビジターセンターに止まる車は殆ど無い。

睡眠時間を削ってものチブリ尾根、とはいっても時刻は9時、皆様はとっくに出発されて人影は無い。天気は良くて流れる水は澄明、タニウツギはちょっと色褪せてはいるがミソサザイの声の木霊する道を歩いて猿壁登山口を通過した。地にも森にもお山にも、興味深いものが溢れているから当然ながらブラブラ歩き、これでは別山は遠のくばかりだ。

巨大なブナ・ミズナラ・カツラの作る林の下には林床を埋める灌木などの森がある。大きな葉を広げる草本類の中で、実を付けるのはサンカヨウ、実があればこそ識別が可能だが、ショウマに似た花を咲かせる植物の名は知らない。雪解けの森とは思えない趣きである。明るいとは云えない登山道の脇に、件の花を発見した。先ずは撮影、本人の同意を得ない撮影で、本来ならば肖像権の侵犯である。植物がおしゃべりであることは最近の研究で解ってきた。この場合、件のお花、残念ながら「サイハイラン」の名があり新種では無い、の発する抗議の声を解し得ないが故に、そうした声はなかった事になったのだ。

深い森の下を徐々に高度を稼ぐとまん丸石がゴロゴロ転がる辺りになる。辺りの礫岩はジュラ紀・白亜紀、その中に含まれるまん丸石は更に古く、5億年より古い時代のものらしい。丸い石は石英、これを原材料とする鉱物が作られる環境は満たされている。あとは目の前に転がり出るのを待つばかり。おにぎりだって転がる程度の斜度はある。

早々とお目覚めになった春ゼミの、気合の抜ける様な声が森に木霊する。木と大岩の下から湧き出す水の流れに手を浸すと1秒で痛い。もとよりさほど気合の入った歩きではないから、春ゼミの影響は無い。コマドリの声、その他多数の鳥の声は録音の対象である。尾根北側を歩く様になり雪渓の残る白山が見え出した。樹林の喬木が減りダケカンバに代わる辺りでマムシが出現、低地に多い赤マムシだ。この標高は黒マムシの領域、そこに低地の赤マムシとは、彼らの世界の動向については何の知識も持ち合わせていない、が、もしや人族同様、登山が密かなブームかもしれない。しかし登山者には注意が必要な事象。

マムシの後はツマトリソウ・ゴゼンタチバナの咲く途が続く。ゴゼンタチバナは小さな花は緑色、少し大きくなると白色である。花びらに見えるものは萼だろうか?。そろそろ下山の方々と出逢う時刻、そうではあるが、登山道下に見えるお花は見紛う事なきキヌガサソウ、見に行かねば後悔が残る。シラビソの匂いで振り返ると広大な樹林の海。チブリ尾根は萌え出したばかりの淡い緑に覆われれいる。

樹林が切れると正面に三ノ峰から別山・大屏風が立ちはだかる。斜面の草原にはこの後に続くお花畑の用意があった。道脇に形の良いハクサンチドリが咲く。いよいよ両白山地の真っ只中、時刻は13時を周り避難小屋は目の前にある。登山道の池にはサンショウウオの卵塊が浮かぶ。別山は遠いものの、今回はこれで良い。次回はお山を目標に歩こう。お目当ては山頂にあるからだ。


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