■ 多紀アルプス・氷雨の小金ガ岳
・・・・2010年03月07日
2010.3.7

そろそろ春先の花の便りも見聞きするようになり、今週辺りは鈴鹿の花でも見に行こうと思っていたところ、相次ぐ雨模様では開花の様子を期待できそうにも無く、僅かばかりの春の気配を探しに、小金ガ岳から御岳でもと思いたった。

昨年も、少しばかり季節が進んだ頃にはバイカオウレンの小さな花を見ることが出来のだ。

黒雲と大風に沈む火打岩から、ひとっこ一人見ない集落を抜け、小金ガ岳登山口に移動、目の前の駐車場のバスの中にはさも面白い物を見るような眼差しの、運転手の好奇の目に曝されながらの始まりである。幾らか笑っているようであったのだが、笑われるくらいな事は気にしない。

歩き始めた杉林、昨日からの降雨で柔らかい林床には、明らかに今日のものだと思われるソールの跡。ばか者は一組ではないのである。

林の中は割合に静かで、寺跡が近づくに伴って激しい山鳴りが轟く。霧と細かな雨の中から、山の端の様子は何も見えないながら、強風に傾く林の様が思われた。寺跡を抜けると風の音は更に近づき、風は南西から尾根を越え霧を伴って流れて行く。なかなかの光景である。気温が少し下がったようにも思われ、風の抜ける岩場では想定を超えて寒い。

岩角から振り返って見ても、全ては霧の中であった、僅かに目の前の松ノ木がぼんやり見える程度である。雨が流れるので岩角を持つ手袋が濡れる、手が冷たい。小金ガ岳ピークでは、先行者にお目に掛かれると思っていたが、雨に混じった雪が北から吹き募るばかりで人の影はない。

オオタワ方面に下り始めて直ぐ、一輪のバイカオウレンに出合った、こんな氷雨の時でも花を開くものなのである。その横にも、多少大きめの株が更にひとつ。北壁に差し掛かり、岩場の低い辺りから、霧を含んだ激しい風の流れ、岩の上に立つ一本杉の縦横に傾く様を見るにつけ、風の又三郎のテーマが口を衝いて出た。

岩場あたりに在った小さな群落を見つけることが出来なかった。見落としたのか、まだ成長しないのか、既にないのか。滑りそうな岩角を慎重に抜けてオオタワまでの植林の中を下った。オオタワにも車の陰ひとつだに無い日である。御岳の事を思うと、先のぬかるんだ様子が目に浮かぶ。風は吹き募るばかりで雨も止みそうに無い。

オオタワから、長い車道をとぼとぼ歩いて駐車地に戻った。雨の勢いは直後から増し、御岳を諦めたのは神のご加護とも云える。帰り道がマラソンで封鎖され、迂路を探して彷徨う破目になったのは、人のなせる業である。お釈迦様は池の端から、つまらなそうに立ち去ったに違いない。





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