■ 鈴鹿・入道ヶ岳、サクラグチ
・・・・2023年12月29日
2024.1.8

入道へは宮妻渓から一度、ハルリンドウの咲く細尾根を歩いて、馬酔木の下で、青天の霹靂の如き大嵐の過ぎ去るのをじっと待った記憶がある。今日のところ、そんな天候の激変はまずあるまい。前を歩く中年ハイカーが辿る途は二本松コースと表記されている。植林地の山腹を巻き上がるコースだが、時に覗く太陽の光が温かい。中年ハイカーのカウベルの響きが止み、お先に失礼して少し登ると緩やかな山腹コース、やや靄の掛かる光景ではあるが眺めは良い。

歩き易い山腹途と分かれ、尾根途に入ると誠に細やかな山小屋がある。吹く風は、鋭い痛みを感じる程度に冷たい。降りの皆様が多いところをみると、このコースの利用価値は専ら降りにある事が分かった。しかし、歩けども登れども、容易に着いて来ないピークは精神衛生上宜しく無い。西側に見え出した仙ヶ岳が恋しくなる。

ピークの大鳥居に着いた頃には風が冷たい。こんなところでお昼を食べる方々はそれだけで鉄人だ。鉄人では柔和な人肌のあれ具合は解るまい。と言う事で鉄人とは早々にお別れして辿る馬酔木の途、何やら温かそうな光景に見える深い谷コースに出た。これは井戸谷コースと云うらしい。言われは知らないが井戸の跡などは見た覚えが無い。とにかく急斜面の続くコースであった。これは登りに使う方が良いだろう。この季節の水はお気の毒だ。

さて、西側に見えていた仙ヶ岳である。仙ヶ岳からヨコネ・御所平と歩くと直ぐ横に見える尾根には何やら魅力があった。地図でみると周辺は須らく植林でさほど面白いとも思えない。が、行ってみたい思いは止み難い。サクラグチなどと、名前さえ怪しいお山である。土山町鮎河に登山ルートがある。流れる川はウグイ川、一般に淡水魚と云えば鮎である。ところがここではウグイを用いて良しとしている。興味深い川名に怪しいお山、一見に値する。

綺麗な鰔川(ウグイカワ)公園に車を止め、登山口まではけっこうな距離、山裾を歩くと南北朝時代の城跡に遭遇した。その頃の遺物であるかどうだか知る術は無いが、これまた興味深いお堂が残っていた。お堂を見送り少し歩くと谷間に延びる道がある。獣避けの扉を開けて少し歩いて尾根に登った。そこにあったのは古い寺社の跡である。暫くは古道らしき道跡、これは手形を持たない庶民の道ではなかろうか、などと想像を逞しくさせる。

古道が尽きたらしい頃から斜度が厳しい。何しろ植林の中であるから面白いものが無い。あるのは狸のため糞と、子供の遠足記念の様なモニュメントが二箇所、流石にここは落葉樹の中で暖かく、直ぐ東の尾根を跨いで御所平・仙ヶ岳の覗く場所であった。急斜面の登り降りの果てに到達したサクラグチには桜の代りの薄雪が残っていた。寒風の中でエネルギー補給、しかし直ぐ北側には立派な巨石等のあるピークである。なんで杉林やねん〜

さて気が済んだので後は降るだけだがおまけの登り返しは身体が温まって良い。例のモニュメントを過ぎると踏み跡を辿りながら降るだけ〜と、え?、直ぐ下に見えるのはダムではないか、そんなルートは通って無い。ここで地図を確認、しまったルートが違っていた。斜度は愈々厳しいものの、踏み跡は確りしているし降りる辺りも知れている。このまま転げ落ちよう、で降りた地点が野洲川ダムの前、鰔川公園まで1・3キロの地道歩きが待っていた。いや、面白い体験の出来たお山であった。


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