■ 野坂山地・百里ケ岳
・・・・2023年12月09日
2023.12.10

梅ノ木から針畑川を遡上、凸凹の多い細い道を辿り、久しぶりに見る朽木桑原、人の温もりの消えた家が増えた。大阪を出る頃に空を覆った黒雲は消え、予報の通りの青空が広がる。凍える谷底の気温は2℃、がこの後の気温の上昇は間違い無い。前方を塞ぐススキの波、小入谷を過ぎると百里新道の登山口だ。雪の尾根歩き以来で3年ぶりの百里ヶ岳である。

無人の登山口に車を止め、見上げた林に藪は無い。未だ寝ない個体もあろうと熊鈴は携行はするものの、熊を生かすほどの植生はずっと昔に失われている、とのレポートを読んだばかりだ。ずっと昔、木に登る母熊とその下で遊ぶ小熊を目撃したのは小入峠である。あの頃の林床には木の実が散らばっていた。

今歩く、コナラ・クリ、ブナの林に木の実は無い。枯葉だけが堆く積もって、しかし葉を落とした尾根からの眺望は素晴らしい。箱庭の様に小さな小入谷、日本海沿岸部の街並は美浜の辺り。よく晴れた、暖かい陽射しの中の急斜面を登って降って、最低鞍部にある、衝立の様なアセビに覆われた細尾根を渡るとシチクレ峠である。木地山集落と小入谷を結んだ峠、今では踏み跡などは消え、ただ記憶に残るだけの峠である。

目の前の山並に、尖った山頂部を見せるのが百里ヶ岳、あんなに尖って、それも鞍部は一番低く、さぞ登り返しは苦しい事に違い無い。綺麗な尾根をただ歩いた訳では無い。北側の、やや湿っぽさの残る辺りに倒木があると、熊の居ない事を念じつつ、腐朽の状態を観察しつつの歩きである。つまり、キノコ狩り。森のキン類の有り様に変化があるのか単に渇き過ぎただけなのか、何にも無い。

厳しい斜面に耐えると小入峠からのルート出合い。地形上、この尾根の風はいつでも強い。風に乗って、人の声が届いたようだが気の所為か。越冬のガラの集団が傍にいて、大いに賑やかな尾根である。岩場を越え、ジグザクに続く踏み跡を辿ると人で賑やかな百里ヶ岳ピーク、3組のパーティが集っていた。

エネルギー補給の間も、彼らの声は絶える事が無い。4人が去り、1人は木地山方面に降り、さて小入峠に向かって下山開始。それにしても寂しい林床が続く。峠へは、最後とは云いながらもけっこうな登り道。途中のブナの林でキノコなどは見た事は無い。ひたすら歩くと「鯖の道」の標識の掛かる根来坂峠に着く。

嘗ては、立派な祠に赤い涎掛けのお地蔵様と、大きなブナが作る雰囲気の残る少広場で、右に降る道を辿ると、いつの頃かも分からない、何処へ続くとも分からないような錯覚を覚える場所であった。今では小さな祠と寂しそうなお地蔵様、枯れたブナの根が残っている。一部は舗装道路を歩くものの、鯖の道を辿って小入谷に到着。綺麗な水の流れる川辺の集落を見ながら、古い道の残りを辿って登山口に戻って来た。気温は15℃を超えて暑い。


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