■ 但馬・大杉山・蘇武岳
・・・・2023年05月20日
2023.5.21

有難い無料高速を北上と同時に雨になったのは残念至極、万場スキー場の駐車地はガスと雨で暗い。使用禁止のトイレでは、カッパを着ける方々が4人、隣に来られたアベックは、雨の様子を暫く眺めて去って行った。カッパ装着にしてはグズグズしておられた4人のパーティー、意を決し雨の中に飛び出て行かれた、偉い。

彼らは偉いが、暖色系の色の無い霞むゲレンデに飛び込むタイミングが難しい。快適な車を捨てる条理とは?、などとぼやいている間に出るほうが早い。雨のスキー場は見ためより優しかった。これなら春の小糠雨、濡れていくのも一興である。雨の中、ゲレンデ脇で働く地元の方の姿が二つ。栃の花は今が盛り、近くの養蜂箱に群れるミツバチは見なかった。ガスに煙る侘しい光景の中でタニウツギの花だけが赤い。

谷に入ると登山道に藤の落花がある。藤の花は今が季節、ガスと雨の中で希少な色彩、別名「絞め殺しの木」と云う側面もある植物である。先の方々は巨樹の谷へ向かわれたようだから、こちらは大杉山へのルートを登る。まるで下草の無い綺麗な林床に今年生まれの双葉がポツポツ。枯葉の様な擬態を見せるのはウンモンスズメと云うらしい、横から見るとまず枯葉。綺麗な林床を見るにつけてもこれが育つ環境は残したい。上方で、警戒音を発して逃げて行く鹿、彼らの腹も現実である。

北に位置する右側の谷の樹木は大きい。一般に云う巨木の範疇に入るサイズである。ガスに霞むシルエットは、妖怪を思わせる怪異な姿をしている。深い雪との相克の結果だ。対して左側の深い谷底から伸び上がる樹木は綺麗である。明るさの出てきた森の中でジュウイチが鳴きだした。ジュウイチが鳴くと間もなく他の鳥も続いて鳴く。アカショウビンが鳴きだすと夏らしい雰囲気になる。

天候は回復傾向だが大杉山のピークは遠い。何合目などと記した看板が設置されてあるからなお遠く感じる。目の前の高みがピークであって欲しいと願うのが人情である。鹿がまたもや警戒音を発した。大杉の前であった。大杉まで登ると直ぐにピーク、エネルギー補給が無いとこの先へは行かれ無い。エネルギー補給の間に体が冷えた。気温は4℃、冷たい空気の到着で回復傾向の天候にも影響するだろう。尾根上に吹く北西の風は冷たかった。生命の危険を察知してこの先を断念した、なにせ手袋を持たないから痛む手を納得させる手段が無いのだ。蓋し、英断である。

降って来たスキー場のゲレンデに咲く大輪のテントの花。気温も16℃くらいまで上昇し、世は正に、のどかな週末を迎えていた。


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