■ 北摂・冬景色の北摂尾根
・・・・2010年02月07日
2010.2.8

今年に入って2度目の寒波、やっと大阪平野にも、うっすらとではあっても雪が降った。車は薄い雪化粧、北摂尾根は僅かに白いものが混じっている。こんな時は近場が良い、わざわざ危険を冒して遠くに行くまでもなく、暗い杉の林に幾らか目こぼしさえすれば、目の前の尾根でも十分に山の気を感じることが出来るのだ。

粟生から始まる勝尾寺参詣道付近に車を止めた、直ぐ上の路面には雪がある。車の少ない静かな谷間を、妙齢のご婦人がゆったりとした足取りで登って行かれた。笑いさざめく声に前方を見ると、もう一方のご婦人、示し合わせてのハイキング、歩みはのろいとの事で先を歩かせて頂いた。

外院コースにでるとすぐ、薄い雪面の一面に多数の足跡が残っていて、何時でもこんなに多いのか、今日に限った事なのか、兎に角その数は半端ではなかった。前後に人の気配が無いのだから、彼らは随分早くに登っていった事になる。大阪平野を見渡せる展望所から左に折れて古道を歩いた。

厚く敷かれたコナラやアベマキの落ち葉と霜を、踏み砕きながら歩くのは爽快である。後にはソールの跡をくっきりと写した足跡ができる。古道を登りきった植林地の脇に、休息中のカップルがあった。新道(と云うかどうか)と再び出会って勝尾寺前のピーク、ここから勝尾寺に向かって長い階段が続く。

雪を被ったセメントで固めた階段は、兎に角良く滑る、かにの横ばいなどと形容すると、大それたあたりの話しかと思われることも敢えて辞せず、一段一段、慎重に下る様はやはりカニの如きであった。やっと勝尾寺まで辿りつくと案外の人の多さ、快晴の温気に暖められた路面の雪は、確かに随分少なくなった。

勝尾寺園地では未だ陽が射さず、路面一体は真っ白である。ところが夏タイヤを履いた数台の車で乗り付けた人ははや、まことにささやかな雪像などを作って余念がない。奥へ続く林道には、二方のご婦人連れが散策を楽しんでいる。

和やかな冬日和と云うほか無い。短い林道の終点には踏み跡はない、ここは冷蔵庫の底にあたり、気温も他と較べて若干低い。

谷川を越えて北摂尾根までの厳しい登り、忽ち汗が噴出し息が上がる、このルートの僅かな区間だけなら台高や大峰に較べてもけして見劣りするものではない。がしかし、植林地と自然林の違いは歴然であって、悲しいことに、歩いていても目を奪う何者もない、単に苦しいだけである。と、途中の鉄塔したの、雪面に残る怪しい足跡、鉄塔から下がる太いロープ、関電の巡視員の技であろう。

足跡は尾根から下り尾根に戻っているのだ、ハイカーで無い事は確かなことだ。巡視道を辿って北摂尾根に出た。ここで目にしたヤブニッケイ、良く似た葉裏の白いものは、随分記憶を辿って、シロダモ、と思い出した。これも喬木の類であるらしいが、実際に目にするものは藪の中で、大きいものは珍しい。

尾根は風が抜けて一際寒い、ところが東海自然歩道の上は足跡だらけだから驚く他無い。政の茶屋に向かって歩く間に何人の人達と出合ったことか。研究路なるコースに入ると数十名の団体さんさえ冷え切った暗い谷の底から這い上がってくるではないか。人の気の、確かな事を確信するに足る現象だといったら、如何だろう。


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