■ 多紀アルプス・鋸山
・・・・2022年12月03日
2022.12.4

多紀アルプスはほぼ踏破した、と微妙な表現しかできないのは、鋸山から栗柄峠に下る尾根が残っているからだ。皆さんの記録を参考にさせて頂くと、かならずしも易しいエリアでは無いらしい。交通の便が悪いのも躊躇する理由である。栗柄峠に降りて帰る道のりが決まらない。小刻みに刻むにしても、知らなければ難しい。高坂から入り、東鏡峠を経て鋸山まで歩くと残りは僅かだが、登り降りの行程は猛烈な藪と湿地になるらしいのだ。先ずは様子を探るべく、佐仲ダムの手前の集落、小坂から鋸山までを歩いてみた。

濃霧警報の出た丹波地方、篠山も同じく濃霧の中、木々に着いたこの冬初の霧氷でお山も白い。寒いとどうも出足が鈍る。雪山を待ち望む皆様には待望の季節だが、木もれ陽の里山歩きに雪は不要だ。どう考えても温かい方が良い。小坂集落入口の、神社の前に車を止め、外に出た途端にパラパラと不穏な音、梢に着いた霧氷の落下する音だ。う〜寒い。

神社裏の308mピークに城跡があるようで、そこからほぼ真北に続く尾根の先の鋸山まで歩く予定だ。予定の通り、地図の実線を辿ると墓地がある。上に続く踏み跡を辿ると墓地跡に出て、その先に古城どころか踏み跡は無い。上には霧氷の雫の藪が続き如何にも嫌な雰囲気だ。これはご遠慮申し上げて、別のルートを探す方に変更。尾根に向う古道らしき点線は他にもある。

道の先の、無名の池の手前に消えかかる点線がある。防獣柵を越え暗い植林地左上に続く獣道、恐らくこれと判断して登る厳しい斜面、先の墓地跡と選ぶところの無いルートである。藪を漕ぎ、集落を見下ろす地点まで登ると陽射しが出て温かい。身体は既にカイロの役を果たしている、が辺りが明るく温かいと自ずと歩みが軽くなる、かな。併せて、古い道型が途切れ途切れに現れて歩き易い。

左が切れた岩場に出て、暑いくらいの陽射しの中で見た篠山盆地は霧の海に沈んでいる。頭を出した島々と松林、大河ドラマのオープニングで見る様な見事さだ。朝からアホな事に血道をあげたご褒美である。城跡から延びる尾根と合する辺りで道脇に残る小さな熊手を見た。古い時代の名残だろうか、掃除道具に付き物のお地蔵様などは見えない。

多少の登り降りを経て、鋸山西のピークに到着、葉を全て落とした尾根の上を冷たい冬の風が抜ける。鋸山ピークに小広場が出来た。春日の町はほぼ霧が晴れ、氷上辺りは未だ霧の中である。展望は良いが風が冷たい。南側の暖かさが恋しいので下山を開始、南に延びる尾根には点線がある。いきなりルートを間違えて修整した尾根に、以外にも踏み跡らしき跡が鮮明だ。後は楽勝、ここらでエネルギー補給と立ち止まった落葉の上にもう暖かい陽射しは無い。冬は忙しい。

エネルギー補給を済ませ、踏み跡を辿るだけのルートで俄に踏み跡が消えた。尾根の先に近頃の踏み跡は無く、消えた左斜面は急な植林地だ。そんなアホな、と地図を見たところ、急斜面の谷底の先には高坂集落へ抜ける道がある。踏み跡の主達は暗い植林地を降って高坂に降りた。これを辿るのは易しい、が暗い植林地を辿るより、長いが明るい未踏の尾根を歩きたい。

点線の無い尾根ルートは長かった。時には古い道状の踏み跡の残るルートではあるが、ほぼ道は消失している。今日歩いた痕跡が新たな道の一歩になれば幸いだ。人里への最後の降りが一番難しい。人の消えた里山の荒れ様は尋常では無い。加えて他人の庭に無断で立ち入る訳にも行かない。防獣ネットを開け、様子を伺いながら降りたところはちょうど畑の切れ目であった。遠くに「黒まめの館」の見える場所だ。

さて、鋸山界隈の偵察を終え、里の近くは厳しい藪だが、山は案外歩きやすい、と云う結論を得た。この冬に残る区間を踏破する目処がたった。


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