■ 若狭・古屋〜天狗畑
・・・・2022年11月05日
2022.11.6

南下する高気圧の影響で中南部は概ね晴れ、北部は冬型の時雨模様、天気予報は行楽日和を伝えている。行楽日和に加えて新型コロナの旅行支援で主だったところは人だらけ、行くとしたらやはり北部、天気の手加減を期待して、天狗畑辺りを歩いて来よう。

雨模様の沿岸部を避け、やや南に位置する古屋集落、濡れた路面に加えて雨が落ちる。天の神さんの連れない仕打ちにも負けず、ガスに霞むお山を見上げて妙な瓦に気が付いた。立派な鬼瓦はよく目にする。ここらの瓦は頭が無く、まさかイワシの鬼瓦とは思えない。が、鬼を退ける豆撒きにはイワシを使う。まるで掛け離れたものでは無い。イワシを屋根に乗せる話は聞いた事が無い。調べたところ「シビ」と云う火除けの呪いの一種らしい。道路標識に「上市場」とあり、立派な門構えの家が連なる地域である。古屋にも蔵は多かった。豊かな地域の怖いものの筆頭は魑魅魍魎では無く火であった。

狭い谷沿いの道をお山に向かうと沢に降る細い道が分れる。ここを降り沢を超え、尾根を攀じると上林峠を経て仏主に至る京への道だ。晴れならここから美山に至る洞峠・天狗畑を周回する予定であったが雨である。気乗りがしない。道を詰めると枯れ草に埋まる住居跡の片隅に蔵の残る古屋集落。嘗ては参勤交代の行列も通る主要道、入口空地に車が1台、落葉に埋まる広めの路上に車を止め、集落の見学を兼ねて沢沿いに歩く。無人に見える上の家に車が2台、男性ばかり3人はいる。家の関係者か栃の実の関係者か、何れにしても男ばかりで色が無い。雨雲の下の晩秋の集落は愈々小さく寂れて見えた。

集落を過ぎると杉の林の続く薄暗い道、嫌になるな〜、谷川のヤマメも無愛想だ。狭い谷の中の古い耕作地は堅牢に作られた石垣で守られ存在感がある。車の轍は新しい。集落の名物は栃の林とその実である。故に雨の朝からの収穫作業だ。今日は峠道では無く栃の谷を見て天狗の畑まで登ろう。前回、大ブナの近くに栃の谷へ降るルートを見た記憶がある。幸い新しい足跡も栃の谷に続いている。

お山に入るには先ず吊るした鐘を鳴らす儀式が必要、お山のクマさんも突然の訪問はお断りだ。谷中に響く鐘の音で頭がクラクラする。峠道を右に見送り谷の奥に突入、深い谷底は当然更に暗い。賑やかな雰囲気の右の谷を見送り更に奥に入る。少し先でやはり左右に別れ、右の谷には踏み跡と滝の案内、左の谷は荒れて暗い。狭い天を見上げると大きめの雨粒が落ちて来て俄に騒がしい。

行く気が無くなったので、引き返し賑やかな谷を登る。地図を見ると天狗へのルートはこの上である。樹齢300〜1000年の栃などと豪気な看板はあるが結構斜度のキツい谷だ。動物だって食べるだろう?、といった事は周囲を囲うバリケードで納得した。人のテリトリーが出来ていた。中に入り、斜面を登りながら足元の栃の実を探したが見事に無い。この点は鹿と同じ。上まで登ると右は聳える岩の壁、カメラはあったが停止中、かな?。ここでまたもや大粒の雨、、。

人のテリトリーを出て更に登るとやや平坦になったところで巨大な栃の大群落、当然人のテリトリーだ。群落の背後は岩雪崩とも云うべき鋭い角の岩に埋まる斜面。ここから踏み跡の無い左の尾根に乗って上を目指す。ルートはあったようだが今では痕跡は無い。登り付いたところは大ブナの右100m、案内は残るものの行かない方が無難である。天狗目指して歩く尾根にガスが出てきた。前方が明るくなったのは木々のプレゼント、紅葉のお陰で明るい。陽光と間違えたのはタカノツメだ。折角だから明るい紅葉の中でエネルギー補給。

さて、天狗へは目の前の急斜面を100mほど降って登り返し、というところで再び雨が来た。やんぬるかな、辺りは全てガスの中、天狗様がイカンと云うなら素直に従うのもあり可。前途を諦め洞峠周りで降った頃に、やっと覗いた青空の中、今日始めての天狗畑。古屋集落で何やら作業中の方々の車は大阪ナンバー、今から里山暮らしでもあるまいが、週末だけの里帰りだろうか。


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