■ 台高・和佐羅滝〜伊勢辻山
・・・・2010年01月17日
2010.1.18

早朝の冷え込みで車の用意に思いのほか時間が掛かってしまった。予定より1時間程も遅れて大又の集落に着いた。乾燥した道路には、危ないところもなく、夏タイヤでも何ら問題ない。が、貯木場より先はやっぱり遠慮しよう。

用意の間にも次々と車が上の駐車場を目指して登っていく。鯉の滝登りに似ている。貯木場から下り、一台の車が停まる和佐羅滝入り口から登山道が始まる。あの車は、駐車代をせびりに来るおばさんと格闘する必要があるかも知れない。

それにしても、いきなりの急登は応える。古い街道として栄えた面影は、綺麗に積み上げた石垣、突き出した岩盤を削り、ほぼ1mを越える道幅が続くどこにでも伺える。

急登をこなすと後は緩い登り勾配が続く。うっすらと雪化粧の道に、スパイクの着いた長靴の跡が続いていたが、和佐羅滝の手前で引き返したようで見えなくなった。滝道との出会いを過ぎると別の足跡が続いている。傍には寄り添うように獣の足跡もある。これはどうしても犬連れと考えるのが普通である。

滝の多い厳しい谷川を見下ろすように作ってある道からは、流心だけを残して一面凍りついた川面が見える。数年来見たことの無い光景からして、随分気温の低い状態が続いているのが分かる。雪はそれ程多くはないが、尾根道への出会い付近を過ぎたあたりからは、踏み跡があるとないでは随分違う。

既に朽ち果てた山小屋の傍で、切り株に腰掛けて休んだ跡から見ても、先行者には相当疲れがあるものと見える。雪が多くなると同時に勾配もきつくなった。雪の重みでたわんだ樹木が、荒れ果てた登山道を塞さぎ、迂回するのさえかなりのアルバイトだ。先ほどから先行者と共にあった動物の足跡が消えた。これはどうしたことだろう。

伊勢辻手前の急勾配を過ぎたところで、スノーシューを着けて下ってくる先行者と出合った。暫く立ち話をするうちに、犬の同行は無い事が分かった。伊勢辻まではスノーシューの跡を辿ったが、雪が柔らかくて足が埋まる。ピークまであと僅かなところが一番よく沈む。スノーシューもここから着けたらしい。

陽射の無い伊勢辻山ピークは、樹氷の林が美しい。なだらかに続く台高主稜線がくっきり見え、前方の薊岳が見え、明神平までの道程が鮮明である。ところが時間は13時。陽射が戻った時の樹氷を纏ったシロヤシオは、見事という他ない。一瞬の輝きにあっと驚くばかりである。

暫く眺めるうちに手が動かなくなった。下りに入って間もなく、真に草臥れきったという体の男性とすれ違った。アイゼンを着けていて、踏み跡は大峠方面から続いている。

恐らく、地蔵谷あたりから這い上がったものだと思われるのだが、そうすると赤ゾレ山までは行くだろう。良く滑る下りはかなり早い。スノーシューの道があるのでなお更である。谷に流れが出来る辺りの陽射の中で、簡単な昼食を摂る事ができた。暖かくて昼寝も出来そうであった。谷川の氷に煌めく陽射が優しい。

陽射しを離れるとこれが非常に寒い。直ちに氷点下に戻ってしまって、猶の事寒さを感じる。今後の事も考えて、和佐羅集落を訪れた。思ったよりも標高の高いところにある。ちょうど陽射しがあって長閑な山村風景そのものである。庭にはロウバイの花が匂い、物音一つない静寂、時間が止まったような集落である。谷を隔てた谷向こうにも同じような集落が見えた。

薊岳への登りにある、豪華な洋風の建物のある集落がそうである。幅の広い道路が通じ、車ならそれ程の不便もなかろうが、歩きづらいほどの勾配はかなりしんどい。道はどんどん下って和佐羅滝上り口まで戻ってきた。予定では、もっとずっと上流の、駐車地に近いところで在る筈だった。明神平から下る車が頻りに続く。


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