■ 丹波・五台山
・・・・2020年04月02日
2022.4.3

春眠暁を覚えず、目覚しで起きたところを魔力で眠らせる、お陰で暁を見る機会を失った。これはひとえに春の暴力に等しく、目覚めたときには陽射しが眩しい。ここで屈しては春に負けた事になる。昨夜の予定はさっぱり水に流して、何処か良いところは、で思い出したのが氷上桜、長大な加古川の、川岸を埋める桜並木はそろそろ見頃を迎えるはず。横に聳える五台山なら遜色なかろう。

無料高速を降りると陽光溢れる氷上の田園風景、沿道の桜はほぼ満開、堰堤の桜は6分咲といったところで満開は2〜3日後か。岩瀧寺の駐車地に降りると風がちょっと冷たい。歩き出したばかりのところで小さな花を咲かせる桜は満開だ。お寺の境内に咲くセリバオウレンは須らく種に変わっていた。治水工事の終わった独鈷の滝は静けさと透き通る水を取り戻してはいたがやはり高さが少し足りないのが惜しい。防獣扉を抜け不動尊への階段を登るとミヤマカタバミの群落がある。山陰にあたる午前中は花は半開き、不動尊をちょっと見て、滝の背後に続く登山道を登る。水平道にはハシゴが掛かり、これを降って谷底の岩を歩くと砂防ダムの前に着く。

砂防ダムの上に登ると風に揺れる枝先に、透けるような黄色い花が咲いていた。ここのヒカゲツツジは毎年、他の群生地にさきがけて花を咲かせる。ここまではまあ光溢れる中である。ここからはほぼ直射日光の無い谷川沿いの途が続き、作業道を挟んで山頂まで続く植林地を登るのであるが、思いのほか斜度のある途だ。そんな林床に白い、マッシュルームのようなホコリタケがあった。

秋には克くみるキノコで摘むと白い煙のような胞子を飛ばす。春とは云いながらも雪の消えたばかりの時期に出て、秋まで形を保つのだから凄い。ひらいてみると中は詰まっていて柔らかい。食べられるキノコかどうかは知らないが、食べて毒があるようにも思えない。道中の徒然に調べてみたところ食用であった。

暗い谷底、あるいは植林地の中に、一見すると立ち枯れた様に見える木がある。辛うじて識別できる樹皮を見ると山桜、ソメイヨシノなどでは、この環境で生き続ける事はまずあるまい。高みの枝に葉はなくとも、手の届く辺りの樹皮に新芽がある。日盛りの桜は春の最中、不遇の木にも春は等しく訪れる。むかしむかしのお話と同じだ。「敷島の やまとごころを 人問わば 朝日に匂う 山桜花」


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