■ 近江・長命寺山〜津田山
・・・・2022年02月19日
2022.2.20

湖岸道路から見た山裾の霞む比良山系、黄昏の陽光の中の湖と、彼方に立ち上がる雪の比良は忘れがたい光景のひとつであった。美味しそうな料理の並ぶテーブルの彼方に、そんな借景があったら料理の味もさぞひきたつに違い無い。湖に拓けた露天風呂から望む光景も捨てがたい魅力だ。なんとかそんな雅やかな景色を堪能したい。その為にはやはり知ることが必要だ。地図を開くと近江八幡の西方、琵琶湖の水面に影を落とす半島がある。2キロほど北には沖島の浮かぶロケーション、淡水に浮かぶ島はどんなところだ?

着いたところは長命寺町、直ぐ前には竹生島への渡船もある港で、山腹に長命寺と云う古い寺のあるところ。海と違って風に塩の匂いが無い。溶け残る僅かな雪、静かな小さい港の冬の朝。係留船の下はどんなお魚がいる世界?、と覗きこんだ水面は茶色、水の中は秘中の秘、覗き見禁止の世界であった。ガッカリばかりもしていられず、唯一の土産物やさんの前に車を止め、808段あると云う階段を登って長命寺を目指す。しかし808段、ゴロの良い数字は浪花の808や橋、江戸の808や町と同様、大幅にサバを読んだ数字に違い無い。

午後は雨の予報だから、真面目に歩く横をお若い男性がすり抜け登って行った。808はサバ読みでも、半分の404でさえ朝からは厳しい。山門に辿り着いたところで汗を拭き、地図を睨んで車道を少し降ると膨らみに止めた車が1台、その横が登山口である。照葉樹と植林の杉・桧の古そうな道は泥濘んで暗い。すぐ傍に半ば枯葉に埋まったお地蔵さんの並ぶ途である。少し登ったところで降りの女性とすれ違った。これでどうやら無人になった。

山道の寺側に「立入禁止」の看板と有刺鉄線が張られている。如何に不法な民がいようともここは寺、「救民済世」はお寺の本文ではないか?。事情は知らんが人心の荒廃を疑わざるを得ないのだ。暗い山道に雪が出て来て、着いたピークは長命寺山、ピークに腰かける男性が1人、奇特な人は居るものだ。踏み跡に付いて先に進むと東に展望の拓けた岩に出た。する間に件の男性は去って行く。

ピークから少し戻り、先の男性の踏み跡も新しい北へのルートを辿り、半島を南から北へ縦断する予定。雪の尾根を降ると木立の隙間から湖面が見える。ほぼ展望の無いコース、覗き見でもしないと歩く甲斐が無い。目指すピークは津田山またの名は奥島山、登り途は大岩小岩でなかなか苦労する。先の人は足跡ばかりで背中は見えず、なかなかの健脚だ。

大岩の間をすり抜け中央の三角岩が嫌に目立つ平坦地が津田山ピーク、三角岩は権現様の御本尊である。林の先に沖島が見えたようだがやはり展望は無い。降りの途中、上からロープの下がる大岩があったがありゃなんだろう?。ズンズン進んで北の空に子山が見える場所である。辺りはウラジロに覆われ雰囲気はやや改善した。改善はしたが代わり映えの無い尾根を北まで辿ると帰りの地道が長い。足跡の主に迷いは無い、が湖に降る点線は魅力的で、楽がしたい欲求につい負けてしまった。

点線のルートは実際廃道に等しいバリルートであった。猪の狼藉で道型は無く倒木で塞がれたところは倒木を除き迂回し、辛うじて残る途は靴幅程度、何とも寂しい途である。半信半疑で辿る途に道標、上からの途跡と合わせて愈々下界に降る様子だ。ここまで来れば後は楽勝、少し降ると県道に出た。目の前には湖と比良山が拡がる、と云う落ちも無く、樹林帯に遮られた下には海水浴場があるようだ。

樹林帯が切れると、ところどころに水鳥が浮かび名も知らない鳥やカモに混じって目付きの悪いキンクロの集団、対岸に雪の比良山がそれほども聳える様には見えず、沖合いに漁師の船が3〜4隻。県道を4キロほども歩いて、やっと港に戻って来た。


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