■ 丹波・西光寺山
・・・・2022年02月12日
2022.2.13

今週も雪の無いお山を歩く。今日の様に、温かい陽射しの期待できる日にわざわざ苦労して雪の中を歩く事も無い。とは云いながら、登山口に向う林道は凍っていて、澄明な水面に魚影・鳥影ともに無い。伸びやかな谷間に木霊するのはチェーンソーの音だけ、湖畔の藪を切り拓く、地元のおっちゃんがお一人。少し歩くと陽射しの中の谷間の道、片隅にはサギソウ自生地の看板が建つ。東屋を過ぎると荒れた道になる。大石より寧ろ小石の方が歩い辛い。そんな道に昨日らしい踏み跡が2つ3つ。

この山は金鶏、金で出来た鶏の伝説で有名だ。前回、地元の方から、今も探している、と聞いたのだから間違い無い。お山の何処かに埋められてあるとの伝説、または伝承が残っているお山だ。登山道を歩いて見つかるような事はあるまいからどうでも良いことではある。が、長い間、専門で探して見つからないものなら、山歩きの途次に見つかる事もあり得るのだ。

小さな谷川を越えた山腹に2つの炭焼窯があった。随分ご無沙汰であったが変わらずに残っていた。近頃使われた様子が無いところまでそのままで、直ぐ上にはウバメガシの藪が覗いている。ウバメガシの炭は高級で需要もある、家で使うのも面白かろう。もったいない。ここからほぼ真っ直ぐ、ウバメガシとツバキの林の中を登る。東向きの林の中に風はほぼ無い、時折差し込む陽射しだけでも充分に暑くて、久しぶりに大汗になった。立ち止まっても冷える気遣いも不要だ。

この辺りのお山は嘗て、海に浮かぶ島であったらしい。隆起で出来た山にウバメガシの多い訳である。三田の大船山などは山名からしてそんな成り立ちを表している。見上げたウバメガシの林に漏れた光、尾根は近い、と判断してからが長かった。そんな状況で、ふと見た登山道脇の土から覗く黄金色に輝く物体、え!、よもや、指で掘って出たのが金色のバッジ、山の神さんも悪戯が過ぎる。

泡沫の夢、にも及ばない儚い夢の後、尾根に抜けると西は植林、右にターンして山頂の東屋で暫し休息。そこへ現れたのはご高齢?、の男性お二人、やはり加東市側の尾根からである。暫く展望を楽しんで、今日はお山の名の由来、西光寺跡を訪ねたい。

お二人が辿ってきたであろう尾根の踏み跡は寒かった。西風は冷たい。少し降るとトラロープの続く急斜面、登り詰めたピークに曰く有りげな石柱が建つ。周辺を調べると人工的な痕跡を発見した。間違いなく西光寺の一部、西光寺跡は直ぐ近くだ。緩くなった尾根を降ると付近一帯、立木にベタベタ貼られたマーク、こりゃ何じゃ?。次のピークは加東市の最高峰の木札があって、周回する場合はベタベタマークの谷を降る。平坦な辺りを調べても礎石ひとつさえ見つからない。

止むなく下り始めた辺り一帯、大規模な建物跡が広がっていた。が、遺跡は酷く傷んだ状態で、谷にあった事が原因か、または噂の金鶏によるものか、まともに残る物は何一つ無い。日溜りを探してエネルギー補給、ほぼ朽ちて倒れた大和杉から3本の枝が伸び上がっていたのには驚いた。水平に倒れた幹の半分は腐っている。

荒れてはいたが西光寺跡は確認した。歩きやすい山道を降り、再び谷に戻ってからは岩ガラガラの道を降る。カラスの群れがギャーギャー鳴く。飛び出た明るい谷間の日向は暑かった。池の堰堤に登って見ると大きな鳥がピーピー啼く。旋回する鳥はクマタカで、右手の高みの枝でピクとも動かないのはカラスである。途中のカラスの群れの大騒動は、どうやらクマタカとカラスの出入りであった。勝者はクマタカ、谷間の空に黒い鳥は一羽も無い。


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