■ 伊吹山地・虎子山
・・・・2022年01月29日
2022.1.30

伊吹山の北側にある国見峠、行きたいと思いながら道の様子が今ひとつ。岐阜側からは問題がなくても、辿ってみたいのが米原からのルートだから仕様が無いのだ。峠の南には名の由来であろう国見岳、北には虎子山、トラスと読むらしい、が連なり、いつか行ってやろうと考えていたがまさか雪道になろうとは思わなかった。夏場でさえ放置される峠道であるから、ゆめゆめ除雪などは期待していない。

県道出合い付近はしかし、車1台分の幅で路面が覗いている。直ぐ上の建物までかと思うとそうでもない。しかし近在の車らしい車両が泥濘の路肩に止めてあるものを、他府県の登山の車が堂々と進んで良いものか。奥のスキー場を目指す車が切れ目無く通る路肩は剣呑である。どうにか出合いの片隅に車を止めて、見上げたお山はガスの中、いつ崩れてもおかしく無い天気だ。

除雪されたばかりの谷底の道は両側に高い雪の壁が残る道である。雪が無ければかなり広い、たとえ土砂などで通行不能箇所があったとしても、そこから歩く事も出来そうな道である。はからずして道の偵察が出来てしまった、儲けた。谷の左岸から橋を渡って杉の林に入った。そこには小広い人工物があり一部は除雪もされている。一体これはなんだ?、道端から広場に降りる鉄管の一部が見えた。あれに水が流れているとしたら、広場の下は水車、小型水力発電所といったものか?。峠道出合いから峠側の除雪は無論無い、が谷の奥では今まさに除雪作業の最中で、おそらくは取水口の保全ではないかと思われる。それにしても雪壁は高い。

道型ばかりの峠への道、先ずは久しぶりにワカンを着ける。持ち運ぶばかりでは仕事を忘れてはいけない。ワカンで踏む峠道は快適であった。そして青空さえ覗いて少し温かい。雪の道をカーブまで歩き、主尾根に続く緩い尾根の作業林道を歩いて虎子山の予定だ。出だしはけっこう良い。と、白一色の道をゆるゆる登る小さな動物、未だ小さな狸の子だ。目の前50m程を着かず離れず登って行く。お〜い、と呼ぶと振り向きはしても動じる様子は微塵も無い。雪の上に彼(彼女)の足跡は残ら無い。降ったばかりの雪であったら物の怪・妖怪の類であった。

尾根を巻くカーブで彼を見失った。何処かへ行った?、と見た尾根の突端、覗いたばかりの太陽に温まっているように見えたその姿、痩せて・濡れた、元気の無い小さな狸がうずくまっていた。食料難の狸が食べるもの、と云ってもパンとチョコレートの他手持ちが無い。クリームパンを投げたら道に逃げ、立ち止まってこちらを窺う顔は恨めしそう。誤解されたら是非も無い、お山に行こう。

お山へのルートにスノーシューの跡が残る。スノーシュー、アメリカ流の物量作戦を彷彿させ、比べてワカンは如何にも大和魂、侘しい限り。が、大和魂としては負けられない。重戦車の如く、雪に隠れた藪を物ともしないスノーシューの跡に対して、踏み跡を辿ると腰まで埋まり、腰を痛めて結局は作業道を忠実に、コツコツ辿るのが日本流。バカポンのパパではないが「これで良いのだ」。

緩い尾根は雪のハイキングと同じで、しかし直ぐに陽射しが消え、山は濃いガスの彼方、雪の舞う面白くない天候に変わったのは予想を超える、天気予報は概ね晴れであった。630を越え、作業道が切れ、背の低い植林地に辿り着いて13時、目指す虎子山はまだ遠い。天気は愈々悪くなるばかりで、スノーシューの跡はまだ続いている。米英を敵としたのは過去の事だ、今日のところはここらで勘弁してやろう。

子狸の岡に戻ると食べようとした痕跡の残るパンがある。狸の味覚に合わないのか、クリームの着いた辺りは残っていた。狸は?、と見廻した雪の無い藪から出た子狸は、雪の道を歩いて向かいの尾根に隠れて行った。途端に風は強まり気温は下がり、強い雨が降り出したから堪らない。ゴーシュさんなら「狸よ、けして虐めたんじゃなかったんだ」と云っただろう。いや、パンを与えたのはネズミの親子だったかな。



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