■ 蘇武岳、八ヶ尾山
・・・・2022年01月08日
2022.1.10

夏場の万場スキー場へは4回、手入れされたリフトは見ていたから閉鎖とは思っていない。夏草に埋もれた食堂などを見るに付け、相当規模の縮小を経たスキー場であろう、位に考えていた。まして駐車代を徴収されるほども混雑する筈は無い!、と思っていたのだ。辺りに空地が見えないほどの盛況振りに驚天動地、1、500円の駐車代で目が覚めた。「登山ですが、ゲレンデ歩かせて貰えます?」、え〜い煩い!、とは言われはしなかったがそんな雰囲気、誘導された駐車場途中の路肩に駐車、あたりの老若男女は全てスノボのお客様、えらいところに紛れ込んだものだ。老けたボーダーの多さにも驚いた。

そうではあるだろうがこちらは登山、混み合うゲレンデへの道を外して登山口を探す。集落から林道を使った名色コースがある筈なのだ。見上げれば、ゲレンデの左側に延びる冬枯れの林の続く尾根は雰囲気も良い。集落外れで真っ白な雪面に足を載せると凡そ60cm程の積雪、壺足でも歩ける程度の雪ではあるが雪質が悪い。尾根に続く、林道にしては斜度の厳しいルート、車は無理じゃ無い?、と思いながらも登れる間はこれを辿ろう。

人工林からブナの林に代わり、これはいい感じだと思っているところで再び人工林、おまけに孟宗竹の林なども出て来て急斜面の前で道が切れた。辺りを散策してみると平坦に区画された植林地は古い水田の跡らしい。急斜面に変わりはないが、植林は右側だけで、左側は自然林で真っ白だ。斜度は雪でカバーが出来る。倒木などを避けて登ると杣道らしき痕跡が現れた。

これを頼みに急斜面を上り詰めると妙な塔が立つ。登山ルートでもなくスキー場の一部でもなく、自然と塔の前に誘導されたから見ない訳にもいかない。塔は、昭和36年にここで生命を落とした23歳と24歳の方の慰霊碑であった。当時の名色地区がどの様であったか知る由も無い、がこんな里山で遭難する程の状況とは、少なくとも昨今の積雪量では無かったろう。

崖の様な急斜面を超えたところも植林地であった。真ん中にやはり道らしい痕跡があり、左の尾根下には大きな人工物が埋められていて、そこだけ雪が溶けて陽が指し、小鳥の声も聞こえていた。やはり奇妙な場所であった。時計を見ると既にお昼、今日はここまでにしよう。膝からしたはぐっしょり濡れて、靴の中にも滲みて来たところだ。

続きはぐっと近く筱見48滝から八ヶ尾山、雪も少なくなってピークで10cmばかり、しかし始終流れる滝に変わりなく、先行されるお若い男性の装備は目を見張るばかり。滝の上から見た下界に降り注ぐ陽光、濃い霧も晴れて上天気。滝場を越えると風のない緩やかな谷間を登り、鞍部から少し登ってハヶ尾山への尾根を降る。今から登ろうと云うのに降るとは、世の不条理は須らくこうした事と同様である。

降りきった肩から登り返し、かなり厳しい斜度がある。葉を落とした樹林の間に見える岩尾根も厳しさを増す。やっと着いたか、と見ると西尾根で、目指すピークはもうひとつ先。この尾根を抜ける風は冷たい。樹氷が出来ても不思議では無い、と見たヒカゲツツジの葉に溶け残る樹氷。

ハヶ尾山のピークで10cmばかりの雪、ここには夏でも冬でも苔が生える。どのような水の循環が苔を育むのか、やはり奇妙な事だ。風のない、温かいピークを辞して往路を戻る。周回すると峠が厳しい。故に不肖不肖ながらも岩尾根を降る。鞍部からの登り返しは草臥れた。滝の下山ルートは750mらしい、がどうももっと長いように感じる。先行した若者は未だ帰還していない、多岐アルプスを何処まで行かれたものか。


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