■ 京都北山・中山谷山
・・・・2021年10月23日
2021.10.24

先週までは最高気温は29℃を越える夏日であった。僅か1週間後の今日、五波谷入口の気温は10℃を下回る。おまけに寒気の南下で各地で小雨、小雨で済めば儲けもの、地形によっては大雨も予想できる。こんなに激しい季節の変化に植物も対応できていない。この気温でも林道の脇に咲く小さな花。ヤマビルと云うのは、ミミズ等と同様に環形動物の類であるが、「ヒルド科」などと恐ろしげな科に属するらしい。晴天の霹靂の如き寒気の到来で、彼らの意気に幾らかでも陰りが生じるようなら有り難い。

秋の深まる頃に訪ねる事にしている五波谷界隈、未だ秋めいた色彩はほぼ無い。人は1週間で、寒気と冷たい時雨で秋の終わりのカレンダーが出来る、が山はそうは行かない。塩を巻き、お浄めを済ませた冷た水谷の先端から登る急斜面、濡れた林床に脚を取られても休めない。ヤマビルに、はい登る猶予を与えてはいけないのだ。

急激な負荷を掛けられた心臓が、何とか対応策を講じようとして慌てている。そもそもその様な装置の着いていない体には無理があって頭が痛くなる。斜度が緩んでくると汗が出てきて頭痛は消える、いつもの事だ。目の前の茂みの中で奇妙な声がする。ヤマドリの様な羽音がするからまず危険はあるまい。が、熊の子の鳴き声であったらこれは非常に不味い。おそるおそる近付くと一斉に飛び立つ様な羽音がして、奇妙な声も同時に消えた。

林床には陽射しも届き、落ちたりんごの様なウラジロの実が散らばる。傍には鹿の寝床があちらこちら、しかし数は少ない。枯れた倒木の間を縫って何とか小ピークによじ登った。いつしか陽射しは消え一面の黒雲、雨が来る?、と思ったところへポツポツ、馬酔木の林を抜けたところで本格的な雨模様、近くのイヌブナの下で雨宿り、寒い。気温は4℃、樹木に未だ葉が残るので雨雪の中でも雨宿りが出来る。

長々と降るなら下山?、でもヤマビルの待つ山裾辺りは歩きたくない。暫く待つと雨は止んだが冷たい空気を残して行った。下半身が酷く冷える、冬山支度が必要になった。明るい、ブナの林を登ると陽射しも戻った。昨年の落葉の上に覗く頭、え!、取ってみると大きなキノコだ。ヤマドリタケらしいのだがちょっと古い。指で押すと脆くも崩れた。もっと良いものはないかな〜

熊の爪痕を残す木は生気が無い。近くの木々はほぼ同じように生気に欠ける。ブナの森消失の前兆かもしれない。昔のこの辺りはほぼ笹に覆れ、簡単には立入る事も難しい、深い森と熊の住む秘境であった。笹の消えた、巨木の倒れた森にもはや再生する力は見えない。遮るものの少なくなった透明な森を風が抜ける。中山谷山ピークから先は冷たい猛烈な北風がぬける。直ぐに若丹国境尾根を五波峠に移動、腹が減るので南側に降りてエネルギー補給、座ると寒さが応える。

五波峠では、雨雪の降る強風の中、林の中でターフを張る1団がおられた。峠から降る林道では、沢ガニに度々遭遇した。車やバイクに潰されたものも多い。路肩に移動させてはみたが、彼らの警戒心を上回る速度で近付く車には対応策が無い。峠の車が買い出しに出て行った。今晩は冷えるだろう。


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