■ 両白山地・三ノ峰
・・・・2021年09月19日
2021.9.20

早朝5時の、ガスの立ち込めた薄暗い空から細い雨が落ちて来る。台風一過の今日も雨、撤退もやむなし、と濡れた椅子などの片付けの最中、通り掛った登山仕様の男性が声を掛けて来られた。天候を伺うと、「今は雨ですが、予報では快晴ですよ」。そんならと、最上部の駐車場に移動して驚いた。昨日は一台も無かった車が一見するとほぼ満車状態、半ばはまだ車中におられはしたが、いつの間にこんな。

薄暗い樹林の中に消えて行く方々に続き、歩き出しから沢に降ること10分ばかり。幹周り3・5mの栗の古木と、かつてはここにも山里があった旨の看板が立つ。昭和30年頃の大地震で里を離れたとか。降ったところにダートだが立派な道があり、激しい瀬音の中を暫く歩くと三ノ峰登山口が出て来た。道を詰めると「刈込池」に通じるらしい。三ノ峰は見上げる様な階段の道から始まる。起きたばかりで身体に鞭打つ様な試練も考えものだ。

小尾根を越えると階段は消えて暫くは谷の山腹、再び尾根芯に戻ったところに「山越邸跡」などと書かれた看板と長椅子が4脚ほど、確かに住居跡らしい平坦地ではあるが、こんなところに住居が可能だろうか?。小椋邸などであったら木地師もありそうだが「山越さん」だし、往時の山小屋だった事も無いでは無かろう。この先は歩き易いブナの道、こんな道ばかりだと有り難い。右往左往する道に斜度が出て来ると小さな谷川の傍を登る。アキギリの咲く登山道にリンドウが出て来て、すっかり秋めいた雰囲気、と表現するには暑すぎる。尾根に出たところで23℃もある殺生な日であった。

尾根には古色を帯びた檜がある。六本檜と云う固有名詞があるくらいの檜達だ。左に歩けば杉峠・赤兎山などという人気のお山、右は三ノ峰を経て白山に続く尾根に出る。石徹白(いとしろ、未だに読めない)から銚子ヶ峰・1の峰・2の峰を経て辿り着くのは至難の業、上小池からの三ノ峰は何とか射程に収まる。射程ではあるがコンディションにもよる。尾根で23℃、陽射しの中はアチチ!と悲鳴を上げそうなこんな日は心許ない。近頃は怠けて距離・高度差の少ない歩きが多いのだ。

幸い今のところ目眩・吐気の症状は無い。右上に目指す三ノ峰が覗いている。高名な檜のなせる木蔭を過ぎダケカンバなどが出てくるといよいよ見あげるような急斜面、三ノ峰の左側に白山が覗いた。前方の山腹を遮る大岩は剣ヶ岩、だったか、これを左から巻いて上に出たところに小さなベンチと山地図があった。暑い!、風が無いと文句の1つも言いたいほど暑い。

登山道は右の大きなカール状の谷の縁に続いている。だから風の無い辺りは少ない。足元にはお花も多くなり、リンドウは途切れる事なく、アキノキリンソウ、ウメバチソウ、咲き残りのハクサンフウロ、カライトソウと云う紅の花は面白い咲き方をする。挙げるときりがないのでここまでにしよう。

やっと1900の尾根に乗った、ベンチのある風の克く抜ける場所だ。ここで満足しても誰も文句を言うまい。背後には大長山・赤兎山などが連なり、谷は大きく深く、左右の尾根も素晴らしい。前を見ると三ノ峰は遥か上空、目の前を埋める山の質量、そこへ向う崖の横の細い踏み跡、しゃ〜ないな〜。泊まり装備の方は休みながらゆっくり登る。小さなアタックザック程度の方々は早いのだ。

何やら斜面が尽きて、灌木の中をトラバースして間もなく、皆様の寛ぐ三ノ峰避難小屋に着いてしまった。三ノ峰は左手上にピークがある。東の空に頭を出すのは御岳・乗鞍・穂高、穂高の横の空間は別山が占領する。先ずはエネルギーの枯渇を補い、目の前の笹原のピークは越前三ノ峰の名があるらしいがルートが無く、ダニでも着くと嫌なのでパス、三ノ峰ピークは変哲の無いピークであった。それにしてもザックをデポすると身体が嘘のように軽い。アタックザック買おうかな。

石徹白方面に降って行かれた女性が1人、どんな手段で帰るんだろう?。30分ほどでさあ降ろう。急な登りは降りにも膝の負担だ。陽射しはやはり痛いほどに強い。樹林帯に入って涼しくはなったが、珍しく水が尽きた。駐車地の無人缶ジュース売り場で、立ったまま2本飲んだ。1本200CCも無い小さな缶だ。


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