■ 京都北山・芦生 櫃倉〜内杉谷
・・・・2021年04月03日
2021.4.4

須後からの芦生は6年ぶり、最後に歩いたのは櫃倉谷だったか小野子谷だったか、満開の桜の下の駐車場に止めた車は1台だけ、午後からの降り坂の予報にしてもやや寂しい。横の民家の庭に放し飼いの鶏がいなくなった、特産の地鶏料理の供給元であったはずだ。入山届けを出して内杉谷に延びる林道歩き、風は強めだが覗く青空は増えて来た、幸先の良いしるし。少し歩いた右側の切羽に、イカリソウ・イワウチワなどが花を咲かせ、鹿は減った?、と思ったところですぐ側で鳴く鹿の声。

舗装林道をぶらぶら歩いて1時間、内杉谷と櫃倉谷の出合いに着いた。今日は櫃倉谷を歩いて内杉谷から戻るロングコース、出来れば目の前の尾根から降りたいところだが、杠葉に埋め尽くされた尾根心の歩き辛さは経験済、長くても林道歩きは確実なのだ。小さな花を付けた桜、マメザクラが時々、コブシは至るところに白い花を咲かせる。こんなに温かくては、さぞ大慌てで咲かせたに違い無い、年の始めの大仕事を終えて安堵したところだろうか。

林道が切れるところで左の小谷で立ち働く人が3人、ワサビ田の整備である。1人、元気なおばちゃんが大きな声で「こんにちは〜」と声を掛ける。新型コロナの渦中であるから、声に向って会釈を返すのみ。お話は厳禁である。先ずは川を渡って横山峠に向かう。積雪の後の峠道は、川に面した急斜面の中程に、踏み跡の痕跡を想像する程度の途であった。今日のところは、道型さえ既に無くなった、ただの急斜面である。

横山峠から中のツボに降る途も怪しくなった。櫃倉谷に登山道は無くなった。嘗ての登山道の周辺を埋める淡いピンク色のイワウチワ、誰も見ないその姿を今日は存分に見せて貰おう。中のツボを過ぎ渡渉を繰り返して上流域へ、記憶の中洲なども流れてしまって、流れの中の岩はよく滑る。坂谷出合いで、ザックを降ろして小休止、少なくなったニリンソウは陽射しの中で1輪だけ。

唯一の滝の高巻きにも踏み跡はまばら、踏み跡も人か獣か判別出来ず、やはり痕跡程度で、核心部では、幾重にも重なった大木が行手を塞いでいる。左は川まで5〜60m、右は山腹の切り立った岩場、入山者があってもここで引き返す人が多かろう。何とか大木の間を縫って、上流側に抜け、しかしここで安堵のあまり気を抜くと、滑る川面にザブン、となるケースも考えられる、油断大敵仏々々。

次はやはり唯一のゴルジュが待つ。狭い岩棚を慎重に、残るお助けロープは泥塗れで恐ろしい、木の根・岩角を頼りにやっとこさ櫃倉谷を登り切り、後は流れもゆっくりした広い源流域が続く。いつの間に晴れ渡る空のお陰で暑いくらいで、陽射しの中のエネルギー補給、目の前の浅い流れにトラウトが泳ぐ。

仕上げは林道への殆ど崖を150m、踏み跡・案内・テープなどは何も無い。知らない人には辿れ無いコースだ。息を切らして辿り着いた林道、既に雪はなく広い空に不安な雲も無い。予定のはずではあるが長い帰り道、加えて欅坂までは緩い登り。欅坂まで、林道を捨て尾根ルートを歩けば短くはなる。が、当然アップダウンが伴うコース、長くても林道で良しとしよう。マメザクラやコブシなどの声援が聞こえるコースだ。

オリンピックの聖火リレーもここでやれば良い。延々と続く内杉谷の岩角から、惜しみなく降り注ぐ可愛いイワウチワの大声援を浴びるランナーに不足はあるまい。声援を浴びつつやっと辿り着いた内杉谷のゲート、残すところは3キロほど、須後の駐車場には18時か、陽の長くなる季節は有難い。


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