■ 中国山地・扇ノ山
・・・・2020年10月03日
2020.10.4

天気予報では1日中曇り、ひょっとすると青空もあるかも、と期待して出かけた扇ノ山、国道走行中から雲に覆われ、雨がなければ良しとしよう。海上集落に入ると戸外で立働く皆様が多い。谷底から段々に尾根に向かって這い上がる田畑に、今日は人影があちらこちら。道の脇に車を止め、見下ろした周辺山野、収穫は半ばが終わり、残るのはおよそ半分、ヒガンバナに彩られた明るい光景の中は、秋の活気に満ちていた。

賑やかな海上集落を抜け、ススキの穂で狭くなった山道を走り、一番狭くなる辺りで対向車に出くわした。後退しながら、対向車の男性が仰言るには、この後にすぐ、牛を積んだ大型トラックが来ると云う。放牧中の牛も、降る季節が到来したということだ。トラックと対向できる、充分な路肩のあるところまで後退し、牛の顔でも拝む積りで、トラックの通過を待った。降るトラックに窓は無い。残念ながら、箱の中の牛は見えない、が、運転席に見知った顔が二つほど、こんな偶然もあるものだ(あちらはしりません)。

以後順当に上山高原まで走り、未だ青々とした芝の駐車地に車を止めると既にキャンプの用意の整うお若い男性が一人だけ。用意の間に現れた男性、素早く左馬殿道に消えて行く。夏の勢いの失くなった森の中で、オオカメノキは見事な色に染まっている。彼を追いかけて左馬殿道へ、ブナ一色の道よりも、杉の林とブナの森と、山ぶどうの葉と谷川が続く途は面白い。

途に入ると夥しい鹿の足跡、これほどの群はここでは珍しい、ここの下草が枯渇するのもそれ程も先の事ではないらしい。鹿の足跡に続いて西の丸の森、谷川の渡渉の次には木地師の集落跡が続く。傍の墓の主とは昨年から4度目の邂逅で、この先の墓の主にも声は掛けておこうか。更に谷川を4つほど越え這い上がったところが畑ヶ平(はたがなる)。道脇に転がる大根の側を、道一杯の大型トラックが降って行った。何れも冬支度には違いない。

扇ノ山に続く登山道を目の前にして、どうも雲行きが良くない。雨に降られるのは1度で沢山で、今回はここで終了、引き返すのが君子の選択だ。ところが帰り道はキツかった。考えれば、畑ヶ平から大きく降って登り返す様な途であるから、厳しいのは当然だ。汗かいて戻った上山高原、誤算は、雨どころか、広い空には青空が広がり、気持ちの良い黄昏時が待っていた。木地師の神通力か大国主のはかりごとか、何れにしても天佑だ。

遥かに日本海・鳥取市などを望むススキの原、360度の展望地にテーブルを置いて夕餉の支度、西の空に日が落ちる頃の風はやや冷たい。東の空に、真っ赤な、命の色に染まる雲が出て、はて、朝日の様な?、と見る間に、群雲を従えた真ん丸お月様がお顔を出した。満月は確か昨日、こんな月の出は始めて見た、これも天佑。月明かりの谷を隔てて、鹿の声が聞こえてくる。


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