金糞岳登山口の一つ、高山キャンプ場からの周回コースはとても長くて選択肢ではない。鳥越林道に入って目当の登山口、夏草に埋れて選択肢を外れ、岐阜側の鳥越峠登山口はと見ると歩けない程では無い。しかしこの炎天下、夏草を掻き分けダニでも着いたら何とする。と言う訳で、林道を岐阜側に降りて国道に出た。目の前は涼し気な川、近頃続く猛暑の中での水遊びは、褒められこそすれ避難はされまい。
がしかし、それでは自らに課した課題がなおざりになる、どうしよう?、幸い、この先を滋賀県に入ると横山岳、の西側に、標高は750m足らずの墓谷山が控えていた。これを登る事にして、日盛りの墓谷山専用の駐車地に車を止めてスパッツを着け、する間にも募る暑さ、大丈夫かな?。
先ずは路地の様な細い道で山裾まで、登り口がないので左に移動、舗装道路を山に向かって歩くと墓があった。登山口の案内がないので作業中の叔父さんに聞く。「墓谷山の登山口は何処でしょう?」、「墓谷山?、あの山だ」と指差す稜線に一際飛び出した高みがそうらしい。「杉の林を登るとお寺がある、その先が墓谷山、道が悪いかもしれんな〜、暑いので気を着けて」、辺りを吹き抜ける風は暑い。
お礼を云って、道を詰めると養殖池らしいネットを張った池がある。ネットの中にはアオサギが一羽、近付くといきなり飛び上がり、ネットにぶつかって池に落ちる。あまり追い詰めてはネットに絡んでもいけない。離れて様子を伺っても、やはり外には出られそうに無い。いつからそうしているのか不明だが、持ち主以外に解決する術もなく、小魚などがいるのなら飢える心配もない。
更に歩くと、上にある由緒のあるらしい伽藍の案内板などがあり、裏に続く踏み跡を辿ると大きな杉の木があった、千年杉と云うらしい。手入れの良い杉の林は灌木が生え、陽も良く差し込んで明るい。藪蚊がまとわり付いて、風はあれども暑い風。整備された道を詰めるとお寺に着いた。鐘楼もあるお寺で、古色を帯びた本堂と庭の一画に列ぶ石塔群、本堂は釘を使わない構造で施錠されている。
登山道はお寺の裏に続いている。道の傍に、今年は始めて見るナツエビネの青い花、涼やかな様子ほどは涼しくは無いのだ。杉の林を抜けると急斜面が出て来た。標高差100mほどの急勾配の乾いた斜面、トラロープは設置されているものの、とんでもなく暑い。斜度が緩むとそろそろ山頂?、尾根筋を辿ると山頂どころか、またも現れた急斜面、お寺の案内板には山頂まで1時間、これが1時間の訳は無い。
一旦降って登り返すとやはり急斜面、救いは、ときに吹く風にひんやりしたものが感じられる時がある、放熱が難しい。主尾根に乗ってからも続く厳しい斜面、両側は急角度で落ち込んでいる、いわゆる細尾根。辺りの樹木もブナ・ケヤキに代わり、4烈した幹周り3mほどのホウノキには驚いた、が暑さは続く。上半身は汗で絞れるほど、そろそろ、熱中症が念頭を掠めるようになった頃、登山道の脇で蠢くものがある。暗い土の穴から、後ろ向きに土を運び出すその姿、アナグマ。距離にして1m、元気が残っていないのが残念だ。
ここから暫く登ったところで水平道に代わり、大きな山標のかかる墓谷山ピーク。僅かな標高に大いに苦しんだ山頂、三角点に座り込み、時計を見ると歩き始めて2・5時間が経過していた。眺望は殆どなし、したがって陽射しも少ない。寺までの降りを計測したところ約1時間、登りは3時間としてもおかしくない。標高の割に、上り応えのある山であった。
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