■ 中国山地・鷲峰山
・・・・2019年12月21日
2019.12.22

鷲峰山は河内から2回、安蔵から1回歩いている。何れも南側のコースで、安蔵峠で出合った後、苦渋に満ちた階段道を経由、立派なブナ林を経て山頂に至る。今回は未踏の古仏谷登山口から登り、鹿野の皆様が親しむ鷲峰山を訪ねるコースである。北側から見ると、目に付くのはやはり人工林で、山頂南側に残る神さびたブナ林などは見えて来ない。

河内方面に行き過ぎて、戻る道の傍らに、小さな、遠慮勝ちに立てられた登山道の看板を発見した。直ぐ前にあるグラウンドの端に、先行車1台の止まる広い駐車場がある。隣に止めさせて貰い、車を出ると薄日の陽だまりは温かい。今でも一部耕作地かも知れない荒れ地に続く古道らしい道、人工林を過ぎると溝状の道は尾根に続く。師走も半ばを過ぎた途がコガネ色に輝いている。辺りを覆うのは松葉とリョウブの葉、見上げると、リョウブは丸裸で越冬準備は整っている、松葉は赤松のもので背が高く真っ直ぐに伸びた美林のものだ。

色を失った薔薇の花を付ける枯れ枝があった。見上げると、立派な松の林に混じって葉を落した喬木が数本、落葉松(カラ松)が混じっていた。標高は未だ300に満たない。駐車地は海抜50ほど、目指す鷲峰山は921、多少の起伏があれば標高差は1000に近い。明るい尾根の古道にやはり木の階段が現れた。これも南側ルートと同じ時期に整備されたものらしい。間の土を失った階段は、傾斜地に出来たハードルである。

単独の男性が降りて来られた。彼の足は軽そうなスニーカー、確りしたソールではあったが、滑った跡を点々と残している。何も無さそうな冬の尾根道に、赤い色は以外と多い。一両(ツルアリドオシ)、十両(ヤブコウジ)、青木、冬イチゴ、などなど。細やかな木々ではあるが、あるだけで気休めが出来る。

登り詰めた見晴らしの良い尾根、湖山池に浮かぶ小島が見え、なだらかな扇ノ山のピーク辺りは白い。一息入れる足元に、色の褪めたコウヤボウキの花。さて稼いだ高度はと見ると未だ標高400ばかり、相当歩いたようでも先が長い。登山口から続く指標、○合目の数字は未だ4であった。この様な指標は無い方が有難い、あれば数字が待ち遠しくなる。

一旦降って、登り返すと他の登山道と合流する。一際大きな尾根に乗ったところで風が出て来た、気温は0℃に近い。更に大きな尾根に乗換えるところで、男女4人のパーティーが降りて来られる。道を譲り、皆様のお顔を拝見したところ、相応の星霜を経ておられる方々ばかり、既に男女の違いも克服されたに違いないお顔。標高差1000、克くぞ来られた。

冷たい風に背中を押され、見えてきたのが展望デッキ、西に大山・隠岐が見えるとあった、が今日は山の端がぼんやり、陸と海との識別も難しい。ここからの傾斜もやはり応えた。凡そ山歩きで応え無い斜面などは経験が無い。何時もどんな山でも応えている。そうして、下山後の下界では大言壮語を憚らない。8合目、9合目の指標は遠かった。もとより、こうした指標に平穏を乱される事自体が情け無い。

情け無くもあるが、どうもただ今の指標杭の配置は公平では無かった。で、下山後に調べてみると、やはりかなりいい加減なものらしく、距離でも高度差でも無い、設置者の思惑などがあると云う、アホらしい結論を得た。

やっと辿り着いた鷲峰山山頂、無人である事は云わずもがな、溶け残る雪と色の無い寒々しい光景、雲行きも怪しく、早く降るのが望ましい。氷点下の壊れたベンチでエネルギー補給、年越しの、用意のできた南側のブナ林を拝見し、来た道をピストンした。光の無い人工林は、鳥目には愈々辛い時期である。


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