■ 若狭・下根来〜小栗山
・・・・2019年12月07日
2019.12.8

朽木の遠敷峠、木地山峠などを歩くと、降ったところはどんな人が住み、どんな家があるだろう、とまだ見ない峠の向こう側に思いを致す。今日は、そうした異郷への憧れの1つを辿り、遠くなりつつある在りし日の景色を辿る日である。遠敷川に沿った道を歩いて、下根来の神社の階段を登ると小学校、数年前に廃校になったと看板にある。それによれば、根来は「ねごり」と読むらしい。忍者の系譜の1つはネゴロ、ここは忍者とは無縁だろうか?。

神社の裏にある「小栗」登山口の看板を見て、見上げると、暗くて濡れた植林の厳しい斜面が続いている。斜面に途などは無く、よく見れば、確かに踏み跡らしきものが有りそうだ。斜度の緩む辺りの林床に、大きな糞と大きな寝床の跡がある。熊か狸か、踏み跡は案外彼らのものかも知れず、鹿の新しい踏み跡は、先週と同様、小栗のピーク下までずっと続いていた。

土が剥き出しの尾根には灌木などがない。鹿の食害か樹木が定着しない程の風が吹くのか。灌木が無いので藪は無い、が倒木は至るところにあって尾根を塞ぐ。欅の巨木は多数見た、里山らしい樹木である。濡れた林床は雪に代わって、少ない雪はよく滑る。前方に、巨大な岩山が現れ、これは全て石灰岩の固まりで、左右は切り立った急斜面で登るより他ない。道らしいものは無いので登れるところを適当に登って行く。が、カレンフェルトの地表はよく滑るのだ。

1つ越えるともう1山、越えたところで右側の杉の林が切れた。振り返ると、耕作地の谷間に小浜の街並みが見えはじめ、靄の中に日本海に浮かぶ島。下根来の標高は70、目指す小栗は720、随分歩いたようでも幾らも登っていない。斜度の出て来た辺りで積雪は5センチ程、鹿の声と沢山の渡り鳥が休む裸の木々。雪の上に散る羽毛は隼の捕食の跡だろう。

見上げた先のピークは目指す小栗に違いあるまい、それにしても厳しい斜面が続く。いつしか積雪は20センチ、細尾根を登るとやっと背の低い馬酔木が出始め、登ったところに小さな池、池の水こそが谷川の源流だ。先導する鹿の足跡は正確に、木々に付けられたテープの間に続いている。目指す小栗は更に遠くの高みであった。もう少し雪があれば歩き易いものを、迂闊に歩こうものなら落ち葉と一緒に流れてしまう。

踏み跡の無い登山道に、小栗を示す看板だけはところどころ、左右に雪の着いた本州分水嶺が見えだし、厳しい斜度がやっと緩む広いピークが小栗、723mに到着。冷たい微風と温かく無い薄日の指すピークは寒かった。南側の斜面の雪を踏んで、僅かな昼食休息で体が冷える。南の尾根に聳える桜谷山、行けるのはいつのことやら。

手足が痛むのでもう降ろう、西側の尾根を降って周回する予定であった、がこう寒くてはウロウロする余地が無い。先導役の鹿も去った後では、残る足跡を辿るのがもっとも早い。


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