■ 中国山地・西仙C〜那岐山〜東仙C
・・・・2019年11月30日
2019.12.1

濡れて細くて、枯れた杉の葉に覆われた林道を詰めると、落ち葉の殆ど無い明るい林道に出た。右折して、ちょっと走った谷川沿いの、杉の林に続く道に登山口があった。気温は零度以下、ガスに覆われた寒々しい光景、訪れる人はあるだろうかと思える程の寂しい登山口、智頭は杉の町を標榜しているのだから、暗くて寂しい杉の林が多いのも道理、だけど、国道にさえ看板を出す程の登山口なら、もう少し明るくても良いだろう。

道は2つ、西仙コースと東仙コース、距離はそれ程も違わない、何れも谷川に沿った林道歩きから始まり、寂しい杉の林を登って行く。何となく西仙コースを選んで右の林道を行く。これが結果的には大正解、この時点では知る筈も無い。谷川と離れた山腹に続く林道、谷底の倒木に何やら白い物が見え、更に登った橋の上は真っ白で、山頂辺りの霧氷は確信してはいたが雪までは想定外、下界の雨は、この辺りでは雪であった。

橋の先が本格的な登山道、いきなり谷コースと尾根コースに分かれ、杉の林は既に堪能した後だから、谷川を渡って尾根コースに進み、少々キツイ斜度のある、雪の着いた尾根を辿ると西側の、全山葉を落した広葉樹の森が美しい。あっちの山腹を歩きたい、などと少し汗ばんできたルートの先は、見上げるばかりの急斜面、時には鎖場などもあるシャクナゲ尾根、春にはイワウチワの咲く尾根らしい、那岐山登山道ではもっとも厳しいコースであった。

鎖や木の根を掴んで登る細尾根に、先行者の足跡が鮮明に残っていて、直ぐ目の前を歩いているらしいその足跡は、2つの蹄の後に2つのアイゼンの跡を残している。こんな厳しい細尾根に足跡を残す動物は、鹿?、カモシカ?、那岐山界隈でカモシカの目撃情報は無い、がこの際はカモシカの方が面白いから、カモシカだと思う事にして、跡を辿ると愉快である。

積雪は凡そ3センチ、斜度が緩むところに避難小屋、「馬の背小屋」とあった。よく冷えた小屋の中は綺麗で、滅多にあるまいと思った訪問者の山小屋ノートはそれなりにある。谷を挟んで、歩いて見たいと思う尾根が正面にある細尾根のピークだ、展望も悪かろう筈が無い。

上の方はガスで全く不明、カモシカの踏み跡は登山道に続き、谷コースもここで出合って、隈笹とブナ・紅葉の類の林の中の緩い斜面をひたすら登る。気温は−3℃、風が無いので寒くは無い。そろそろピークの下辺り?、とガスの間から滝山縦走コースの山小屋が見えた。まだ大分高度を残している。ここでカモシカの伴走が終わり、代わってイタチとネズミの足跡が賑々しい。ネズミは追われて雪の中に逃げ込み、追い掛けるイタチは雪穴の周りをウロウロ、辺りの木々には発達した霧氷。

ぼんやり見えたのは旧ピークのトイレ小屋、辿り着いた旧ピークはやはり無人、無数の足跡は残っている。風があるので寒い、ピークに向かって下降する途中の避難小屋の人影、小屋を必要とする登山者は少なかろう、岡山の方はササっと登ってササっと降る方々が多いのだ。ガスを流すのは温かい南寄りの風、鳥取側より数度は温かく、お日様のもとにある美作の街は明るく、黒雲の下に蟠る鳥取は冬の様相だ。

ほぼ同時にピークに乗ったご夫婦らしいお二人、黒雲の下に霞む鳥取の山並みを眺めて、お先に〜とBコース側に降って行かれた、岡山の方らしい素早い行動。陽も指して来た山頂ベンチに腰掛けお昼、風向きが少し変わると寒い。食事が終わる頃に現れた団体さん、那岐山標高の推移について、お話が盛り上がる。ペンチを空けて、東仙コースを降る。このコースは、地元の方が「良いコース」と云われたコースである。

温かい山頂尾根を外れ、緩い山腹を辿る間は良い途であった。遠くの、山頂部を白く染めた山並が続き、小さいながら霧氷も鑑賞できる途であった。一旦、斜度が出始めると階段道となり、ほぼルート全て階段である。加えて、溶け出した杉に乗る雪は雨と同様、急ぎたくともよく滑る階段途は危ない、こんなところまで、と思う様になると腹も立つ。

駐車地に戻って考えた。再度歩くとしたら、良さそうに見えた尾根を登って西仙コースに帰るルート、東仙ルートは登りに辛く、降りにも辛い、お陰で太腿が今も痛い。良いコースと仰有った、岡山の方々は鉄人である。


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