■ 京都北山・中山谷山
・・・・2019年10月26日
2019.10.27

10月も半ばを過ぎたと云いながら、それほども下がらない気温に加えて高い湿度、小雨の降る五波谷は梅雨のようである。濁りの混じる谷川の水は多く、錦繍に染まる山の端などは望むべくもない。何方を向いても急斜面ばかりの谷底で、灌木と杉の林を見上げてため息が出るのは雨故だけでは無い。この気象では、期待出来ない山の神の衰え、山ビル様はひとえに恐ろしいのだ。

谷底に多い山ビルは、少し斜面を登れば居ないだろう。で、一気呵成に登り始めたばかりの靴を這う山ビル1匹、え〜い、もう少し登れば、と靴を這う山ビル3匹、増えた2匹は大きくスパッツに達している。止まれば餌食、着実にズボンを登る奴を放おっておけば血を見る。辺りに注意しながら、枯れ枝で先頭を弾くけれども容易に離れない。

何とか離してライターで火刑、他の2匹も同様の処置をして、これで終わり、では無いのだ。彼らの影は付いてまわり、小さな小枝に怯え、枯葉の欠片に跳び上がり、車に帰って後も続くのである。そもそも、予報ではお出掛け日和であった筈で、ムシムシと汗ばむ雨の林床は予想の他だ。きつい斜面の登りを終え、緩斜面から下界を覗くようになって始めて薄日が射す。

見渡した辺りの木々に葉が殆ど無い。残っている葉も半ばは枯れ、錦繍どころか銀銅を遥かに隔たる事入賞も危うい。毎年実を付けるウラジロに、今年は僅かにチラホラ、合わせたように辺りに動物の気配がまるで無い。熊の越冬も厳しかろう。ヒル危険地帯を抜けてからずっと、枯れた葉の間にアカハライモリがいる。小さな個体ばかりで一様に山上を目指している様に見える。雨に濡れた山中で、渇き死にする事はないだろうけれども、今から雪の積もる凍る山に、両生類の彼らが目指す、桃源郷があるとも思えない。不思議な光景である。

他にも、この山域ではあまり見ない、ムラサキアブラシメジが沢山発生していた。光沢のある綺麗な紫色のキノコである。新しい山名プレートの架かる中山谷山ピークは無人、昨年の台風禍による倒木と暖秋で、曇天の下は閑散とした光景だ。が、昨年に比べ、訪れる人が増えた事はよく分かる。はっきりした登山道が回復している。明瞭な踏み跡を五波峠まで歩き、林道を1時間歩いて、危険地帯に止めた車に戻った。

これで終われば良かったものを、何処に潜んでいたのか1匹の山ビル、やはり血を見る破目に陥るのは、天命であったと悟らねばならんな〜。


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