■ 比良・明王院〜武奈ヶ岳
・・・・2019年07月28日
2019.7.28

明王院からの武奈ヶ岳は随分久しぶりで、いつと云う記憶が無いから大分以前から登っていない事になる。なにせここからの登りは厳しく、ピストンの他のルート取りを知らないから、結局降りでも膝が痛い思いをする。見渡せば、安曇川周辺は須らくガス、お山の方も厚い雲に隠れて薄い稜線が見えるだけ。雨に濡れた駐車地を一歩出ただけでかなり蒸し暑い。

沢装備の方々が多い駐車場から、庭先に沢水を流す料理旅館の前に移ると沢水の冷気が流れてくる。何と云う贅沢なことだろう、羨ましい限りだ。踏み跡の未だ多からぬ時刻とあって、登山道の続く薄暗い斜面に人影は無い。余りに人が少ないと少々気掛かりな事が出て来る。濡れた登山道を登り始めて直ぐ、発生した熱が溜まって汗が吹き出る。風はそよとも吹かず高温多湿では是非も無い、今日は先週に勝る厳しい日だ。

暑さ対策でボチボチ登り、しかしぼんやり歩いている訳では無い。怖い山ビルを確実に見つけ、無用な献血を防ぐべく、登山道の微細な異変も見逃す訳にはいかないのだ。登り始めて30分くらい、腰を振る独特のポーズで、獲物を狙う山ビルがいた!。けっこう大きい部類の奴である。ストックの先で5〜6回、絶命したかどうかは不明のまま、そろそろ危険ゾーンも終わる辺りで水を少々、何やら臍の辺りで蠢くものは、ヒエ〜山ビル!。危ないところであった、こんどはライターで確実に昇天して頂いた、南無阿弥陀仏。

あまり噂を聞かないこのコースでもこのとおりでは、他のコースは想像に難くない、恐ろしい〜。そろそろ尾根への急斜面に差し掛かる辺りでヒルゾーンはクリヤー、昨年の大風台風のお陰で明かりの差す明るい登山道になった、有り難い。山ビルと多少明るくなった登山道のお陰でここまでは元気に登って来た。緊張が抜けると暑さが身に沁む。休みを入れたところで3人に先を越された。まあ〜良いか。

大汗掻いて尾根に登ると奇妙な鳴き声が響く。一体ありゃ何だ?、と直ぐ側で大声を挙げて脱兎の如くに逃げる猿、心臓が飛び出した。バカヤロー!、体に悪い刺激は山ビルで沢山なのだ。オオルリなどの啼く夏道をボチボチ、後続に背後を取られ、お先にどうぞ、無理を通せば膝に来るのだ。下着を脱いで身軽にはなったが、期待した冷気も風も無く、御殿山は熱くて休息もできない。

御殿山を降ったワサビ峠は木陰で、尾根を越える僅かな風もまた涼しい。この先の西南陵には木陰は無い。折しも、厚い雲間から陽射しが漏れ、陽射しの中は酷暑であった。灌木と草原の西南陵の第1のコブで一休み、する間に、鎌倉山方面に向かわれた男性が追い越して行く。2つ目のコブまでは傾斜が緩い、3つ目は過去、いつでもへばった実績がある。今日の体調ではすんなり登る訳にもいかず、コブを前にして風待ち雲待ちで待機。思いが天に通じたか、はたまた神通力か、俄に辺りはガスに包まれ、陽射しも消えれば北からの涼しい風も起こる。しめた、コブを越えると武奈ヶ岳ピーク、久しぶりに山標にタッチ、空いている南側の石の上は暑かった。

やはり比良は賑やかだった。エネルギー補給の間にも続々と到着する登山隊。暑すぎる石の上をおばさん達に譲り、コブまで戻って下を覗くと、西南陵に続く登山者の姿。苦痛を全面に出して歩く単独おばさんもおられた。しかし、結局どなたからも山ビルの話はお聞きしない。家に戻ったところで山ビルに気付かれる方もおられるのではないか。他人事ながらお悔やみ申し上げたい。


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