■ 比良・大津ワンゲル道〜釈迦岳
・・・・2019年07月20日
2019.7.21

比良は2年ほどのご無沙汰で、こんな雨模様でもその賑わいを損なうことがないのはよく知っている。本命の武奈ヶ岳と西南稜はその通りでも、ここ大津ワンゲル道はその限りでは無い。小雨の登山口前に止まる車は3台、用意の間に現れた車が2台、彼らの行先もやはりワンゲル道では無い。

カッパを着て、深く抉れてジメジメした暗い谷底を歩くと暑さが堪える。尾根に出て、幾らか明るくなったところでカッパを脱いだ。殆ど無風の雨の山中は、カッパを脱いでも涼しくは無い。ガスに覆われた琵琶湖から、ボートのエンジン音が良く響いてくる。

熱気に包まれた体は絶え間なく汗を流して冷却に努めるものの、情ないことに、目眩を伴うようになって小休止、ちょうど石切場跡に差し掛かったところだ。良いか悪いか何時しか小雨も晴れてガスも消え、低い雲は谷底を覆い、山脈の稜線を高層の雲が覆う水墨画の光景が展がっている。

火照る体を微風で冷やし、気合を入れて歩き出したところで厳しい細尾根への登攀、こんどは吐気を催してきたからこれは熱中症。水を飲んでは内部から冷やし、ゆっくり歩いて熱気を貯めないように心掛け、標高を稼いだお陰で気温は低く、湿度も幾らかましにはなった。

茶色く変色したシャクナゲの花が出て来るようになると愈々厳しい登攀が続く。そんな細尾根の灌木の下に、ギンランに似た花が都合3株、後で調べたところ、オオバノトンボソウと云うラン科の植物である。崖の様な斜度を越えるとイチョウガレ、ここで降りの男性に遭遇、男性と云っても、失礼ながら既に老人の風貌で、その歩みは達人のものであった。

イチョウガレは文字通り崖、木の根岩角を頼みに登って行く。四肢を使うから意外に楽、そんな場所が2箇所続き、白い風化した花崗岩の細尾根から、ヤケ山の大岩壁を見て、と云うべきところ、今日の岸壁は迫力に欠け、寧ろ背景のガスに煙る山並が美しい。

白い風化した花崗岩の尾根は花の宝庫で、岩に着いたアカモノの他に、この時期には珍しい黄色い花。調べた結果、キンレイカと云う高山植物であった。鹿の苦手な場所には未だ見ない植物が残っている。ここを越えると釈迦岳の山頂は近く、旧ケーブル下の登山道と出合って、ナツツバキの花を散らした道を辿ると静まり返った無人の山頂。

シロヤシオの残りでもあれば、と期待したカラ岳への稜線は、ナツツバキばかりが目立ち、ふと気付くと、両脇にひっそりと咲くコアジサイ。よく見れば鹿に食べられ花を着けないものも多数ある。しかしこれだけ残れば絶滅もあるまい。近くで鹿の鳴き声はあったが、数は相当減っている、何処に行ったのやら。カラ岳近くの薮から覗く東の展望は素晴らしかった。梅雨時でなければ見る事の出来ない光景の一つだろう。コハクウンボクの葉の上で羽根を休める昆虫がいた。オオトラフコガネと云う、これもお初にお目にかかる。

カラ岳から北比良峠は長い、雨の小康の間に降るとすれば、リフト道が早かろう。引き返して、降るリフト道は次第に暑くなり、登りで濡れた衣服は絞れるほどに濡れてしまった。


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