■ 京丹波・長老ケ岳
・・・・2019年06月29日
2019.6.30

仏主の登山口に着いて驚いた。目の前の川床は綺麗に均され、白い砂礫で明るくなった川は、鮎釣り場としてはあり得ないほどの破壊の痕、長老ヶ岳山頂に通じる細い道は通行止めである。貯木場を兼ねた広い駐車地に先行車が2台、1台には用意の調は無い初老の男性が一人、諸車通行止めの橋を渡って更に驚いた。谷川は綺麗に均され、魚の潜む岩も瀬音を立てる澱みも全く無い。魚が住めないばかりか、ほぼ直線で底の浅い川は、水の勢いを殺すどころか、一度に本流に流れ込み、合流部を破壊して集落に流れ込む。何という稚拙な河川行政だろう。

目指す道の先は工事車両が止まり、川に重機が入り道と併せて大工事が進んでいる。親切に通して頂いてその先を見てまた驚いた。氾濫した川によって、形を止めないほどに壊れた道と橋があった。この先は歩かれようか?、とも考えたが、通行不能な道を知りながら人を入れる訳がない。

森林公園への道を辿ると直ぐ崩壊地、車は到底通行不能、端の踏み跡を辿って先に抜けると後は平穏ないつもの道だ。濡れた道は湿度が高く、工事の騒音が遠くなるのに伴い噴出する汗の勢いも増す。道の切羽にホタルブクロの白い花、鹿の魔の手を逃れて僅かに2・3株、ほぼ植物の姿を消した辺りは雨で崩壊しやすい状態だ。植物が消えるだけにとどまらず、災害の引き金にも成りかねない鹿の食害、何とかならんかな〜

汗だくで着いた管理棟前の広場で小休止、火照った体に抜ける風が気持ち良い。ヤマボウシは白い萼片を落とし、イガグリ頭の実を着けている。例年に比べて実が少ないように見えるのはここだけだろうか?。樹林のトンネルから単独男性が降って来られた、これで山中に人は無い。名残り欲しい風に別れてそろそろ出発、とザックを担いだところへ熊鈴の音が響く。

この時期の樹林のトンネルは暗く、蚊が纏わりつく嫌なところだ。蚊の襲来を防ぎながら、古い階段を登ると尾根に出る。今日は尾根に風が無い。林床のイワウチワは花期を終え、目の前のカマツカにも花が無い。登山道に落ちた白い花はナツツバキのものだ、が見上げても葉叢に遮られて咲く様子は見えない。聊もなく、噴き出す汗に塗れて四阿に着き小休止、鈴の音と話し声が近付いて来た。

暫くして、2人の男性が到着しザックを置いて小休止、弾む話しでは剣岳登山を控えているとか、恐ろしい岩場の続く剣岳はこんな生易しいところではあるまい。ただ、ここより涼しいのは間違いない、お互いに汗が凄い。ピークまで残り3キロ、お先に出発されたお二人を追って再び樹林の中、標高が高くなるとナツツバキの花は未だ蕾、下になったナツツバキの葉の上に真っ直ぐに伸ばした拳骨頭が見えている。

上乙見のルート出合いから上りに転じ、成長した樹木の下の長い尾根道は気持ち良く歩ける。最後に、植林地に出てここが一番厳しい場所だ。陽射しも出てきて兎に角暑い。ピーク下の無線施設から舗装路に出て、暑さとはこれでお別れの予定であった。仏主峠コース出合まで降ってモニュメントの脇でエネルギー補給、何時でも風の抜けるところで寒いほど。

ピークから先のお2人が降って来られ、地図を見ながら仏主峠方面の様子を伺っている。どうやら山旅の先駆け調査と見た。車の通らない舗装路は薄い苔が生じて多少滑る。そんな人気の無い梢に珍しい鳥の影、頭辺りの赤色が特徴であるアカゲラの番だ。アオゲラは人を見れば盗人扱い、今日のところはアカゲラに、鳥攫いを糾弾する様子は無い。

降る道すがら見た要補修箇所は10箇所ほど、梅雨時に工事では余りに遅かろう。代わりかどうか、鹿の届かない辺りに残るヤマアジサイの見事な色合い、再び溢れる汗の中、風に翻るカツラの葉とヤマアジサイは何とも涼し気な様子で、風に舞うアサギマダラはこの世の他のことであった。


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