■ 播磨・三国平
・・・・2019年06月09日
2019.6.9

昨日は、かなり強い雨に加えて風が酷く、登山口まで来てあっけなく退散、しかし悪天候とは云え、何もしないでは怠け者の誹りを免れず、峠を降り、若杉天然林を周回して日程を消化した。驚いた事に、大雨の中でも訪れる方々は後を絶たず、中にはハイキングモードの白人の高校生らしい団体さんもあった。如何に白人が強靭であったとしても、大雨の樹林の谷をスニーカーと短パンでは、早々に引き揚げざるを得なかっただろう。若杉峠の休息小屋は無人であった。

早朝の峰越峠に車が1台、こんなに早い出発は、天児屋山まで行かれるお積りか、または鳥取と兵庫県境を周回されるお積りか。用意の間に更に1台、こちらは三国平のピストンだと思われ、お先に失礼、と登山口を探すのだがそれらしい道が無い。何を隠そう、三国平は始めて歩く。用意の男性に道を訪ねたところ、そこいらに標柱が或る、と仰有る。なるほど標柱は有る、が駐車地を降った薄暗い杉の林を指しているので確かめたのだ。

それだと言われたらやむを得ない、確かに古道らしい道型は残っている。歩き始めて気が付いた、先行する方の踏み跡が無い。昨日の雨を含む古道に、靴跡を残さず歩くのは不可能だ。途は確りした作りで、山腹をほぼ水平に続いているし、向かった先には目指す尾根も見え、それに京都のユリ道に似た道には興味さえ覚える。ただ、歩く人の少なさは、道を塞ぐ樹木の多い事で直ぐに知れた。

どうにか辿ってきた古道も、保存などに興味の無い植林活動とその後の放置によって、杉の林が古道をほぼ完全に塞いでいる。あたりは熊笹に覆われ迂回も出来ない。尾根に這い上がれば良さそうなものだが、笹を漕いで辿り着いた尾根に途がなければ更に苦労が増える。残念ながら、ここは出発点まで戻った方が得策だろう。と言うわけで、往復1時間ばかりを無駄にした。

峠まで戻って、尾根下を覗くと三国平登山口の案内、幾らか得をしたような心持ちで急斜面に続く1本途を辿る。曲折の無い途は兵庫県の山途の特徴、岡山との県境でも同様であった。急斜面を越えると、東側にはブナの巨木の林立する明るい森、西側は暗い植林地がずっと続く広い平坦地であった。残された自然林は僅かで、境界のために残されただけだからこんなものだろう。残念ながら、観光資源としては若杉天然林に劣っている。

薄暗い森には川の源頭部などもあり、もう少し先見性があれば、立派な森を後世に残せたろう、惜しいな〜。ぼんやり歩いていると前方にアベックが現れた。恐らく、道を訪ねた方々だと思う、と言う事は、三国平は思いの外、近いのだろうか?。森を抜け、明るさの先に若杉峠が見えている。標柱もそれを指し示し、踏み跡もまた続いている。少し戻り、三国平への踏み跡を辿ると、昭和の始めに安置されたと云うお地蔵様のある江波峠に着いた。古道はいつの日か歩いてやろう。

三国平への途は、やや心細いながら熊笹の中に続いている。少し歩いたところで熊鈴を付けた男性と会った。熊鈴は必須だな、と思っている目の前が明るく開け、中央の看板に「三国平」と書かれていた。え?!、三国平は直ぐ側であった。地図を見ると、行きたい天児屋山はずっと先で、順調に行っても1時間、藪漕ぎなどが伴えば2時間程度は必要だ。今日はここまでで、次回に回そう。薄曇りの北の空に、一際高い山は東山、あの山も歩いてみたい山の1つだ。

帰途、改めて巨大なブナを見上げ、樹齢は恐らく300年くらい、幹周りは3・6mを計測した。二股に着生した植物はヤシャビシャク、目撃したのは台高山脈に続いて2回目である。耳を澄ませば、どこやらでアカショウビンが鳴く。昨日は冷たい雨の中、今日は気温11℃の森の中、温かい南方から渡ってきた彼らは、意外にも寒さに強かった。


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