■ 中国山地・扇ノ山
・・・・2019年05月18日
2019.5.19

扇丿山は3回目、姫路登山口からは2回目で、駐車地には4台の先行者がある。曇り勝ちの空と強い風、午後には一時雨の予報ではあるが、本格的な雨シーズンの前に、登っておきたい山なのだ。登山口に入って直ぐ、予期していない花に遭遇、大きな緑の葉の上に咲く小さな白いサンカヨウの花。細い谷川の周辺に点々、以前見たのは大峰は弥山、美味しそうな艷やかな実を着けた個体であった。側に居たおば様曰く、実には毒があるのよ、博識なおば様にお礼を言ったのが始めての出会いであった。

今日、亜高山帯である扇ノ山で沢山のサンカヨウを見た。で、色々調べていると、実は甘酸っぱく、食して問題無い事が判明した。おば様、嘘を教えてはいけませんぞ!。そんな事を思い出しながら谷を登るとニリンソウが咲いている。周辺に目をやると、小さなサンインシロガネソウの花がある。山裾を見ると溶け残る雪があった。

今日は出足が良い、と岩を跨ぐと野ウサギの小さいのが足元に居る。見上げた目に未だ狼狽が無い。暫くそうして、ゆっくり山裾に消えて行った。出足だけでなく、とても良い事が待って居そうな気にさせる出来事だった、果たして?。登山道は谷を離れ、イワカガミの咲く階段道の急坂を登るようになった。厳しかった記憶に比べ、今日はそれ程でも無い。寧ろ、白からピンクに変わる花を咲かせるイワカガミ、淡いピンク色のオオカメノキの花など、この様な変化は面白い。

素人考察ではあるが、豪雪地帯で厳しい環境、白一辺倒に飽きたらない植物の努力であろうと思われるのだ。ヤマボウシが緑の葉を白くして、あたかも花びらを演出したように。噴出す汗を強い風が撫でて行く、体温の上昇を抑制するので疲れが少ない。6合目に達すると尾根に出た、展望の良い岩場から下界を覗いて戻ったところでカップルのパーティが降って行かれる。側にはチシマザサのたけのこ、スズコが顔を出している。

スズコは未だ取った事が無い、たけのこの様に取ると根本が硬い。誰かに極意を聞いてみたいがここは公園内。登山道のチシマザサは何れ刈り取られる事になるだろうし、面倒を省くのも協力ではないか!、と思いながらも言い出せないのが情けない。風に靡く白い布切れの様なコブシの花を眺めながら、賑やかな山頂小屋に到着した。お爺さんハイカー二人とおば様(もっとお若い?)方でごった返す狭い山頂小屋に休息場所は残っていない。

やむを得ず、山頂を後にして「故郷の森」コースを降り、山腹林道を2時間歩いて周回する事にしようか。先ずはブナの巨木の立つ展望処まで降ってお昼を食べよう、ここにはベンチがある。多少傷んだベンチではあるが、何とか落ち着ける。が強風の抜ける展望処は寒い、風の無い山頂小屋前が良かったな。

そこへ降って来られたのがお爺さんお婆さんと大きい孫と小さい孫の四人パーティ、暫くベンチで休んで降って行かれた。その直後、お婆さんとお爺さんが素早く取ったチシマザサのたけのこ、スズコを見逃さないのだ。彼らの歩みは遅い、間が空くのを見計らい、少し歩くと直に追いつき、ピストンで帰ると言う大きい孫、お爺さんにスズコの話を向けるともじもじ、あのね〜、公園だけどもね〜、何れは登山道の邪魔物だからね〜、などと、何処かで聞いたような事をポツリポツリ、いやいや取り方を教えて欲しいのです。

スズコは兎に角とって、食べられるところを食べたら良い、といったお話で、その場で生での試食の実演付き、お礼を行って、先に降らせて頂いた。林道には、彼らの車が止めてある。林道を歩いて30分ばかり、お婆さんの運転する車が、ぺこりと頭を下げて追い越して行った。林道を歩いていると、不思議な光景が続いている。山側の殆ど崖にある植物、特にヤマゼリとシダの芽が何者かに取られている。人の仕業にしては中途半端で、わざわざ崖等に上らなくとも何とでもなる。では、愈々食に窮した鹿の変身?、斜面を克服したスーパー鹿の登場か?、が楽なところに柔らかい草は幾らもあるし、鹿の糞は全く無かった。

正体の分からないまま2時間、山裾にサンカヨウが出てきたところで、あ!、と気付いたのはカモシカの存在、崖状の斜面を好み、単独で行動し、春には植物の新芽を食べる動物は、日本カモシカの他に無い。スーパー鹿なら日本の草本類は絶滅するところであった。駐車地に止まるバスはおば様方のお迎えであろう、遥々と四国から来られたものか、ナンバーは確か「香川」であった。そして、下界に降って驚いた。かなり激しい通り雨の痕跡、何か良い事が有りそうな予感は、実はこの事であったのだろう。


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