■ 中国山地・若杉山
・・・・2019年05月11日
2019.5.12

未だ見ないオキナグサを訪ねて、美作を越え中国山地を越えて鳥取の三朝町にある若杉山を歩いた。辺りの山々は、新緑の季節と云いながらも葉は開き始めたばかりで、コナラ等に至っては殆ど裸の木を晒している。雲ひとつない好天のお蔭で、寂しさは何処にもない。まことに細い途のお蔭で、田代地区へ誘導されるところであった。

若杉山登山口のある大谷を詰めると大谷峠、田代を詰めると田代峠で中国山地を越えるらしい。大谷峠へは、細いながらも車の通行も可能とか、が近年の天変地異を思えば、確認が取れない限りは人形峠ルートが安全で、移動距離の長さは止む終えないのだ。登山口の三軒屋に着いた時には汗ばむほどの気温、無人の三軒の家の庭は荒れ、しかし時期を迎えたシャクナゲの花は綺麗なピンク色であった。主無くとも春を忘れないのは、ひとり梅ばかりでは無い。

玄関先に車を止め、10分ほど歩いた林道の膨らみが正規の駐車場、2台の車が行儀良く止めてある。曲折の先のゲートを越え、未だ葉の出揃はない樹林の下は明るい。ひんやりした風が吹くのは未だ5月、登山道とは云いながら、嘗ては牧場への搬送路であった道は楽で、登山と云うよりハイキングが似合う。

早くも降って来られた男性の片手に、手折られたばかりのわらびが1本。で、道脇に目をやると、わらびの他にエビの尻尾、リスの齧ったマツの実の残りだ。がよく見ると、沢山残るエビの尻尾は全てエビの芯ばかり、豪雪地帯ではあるし、節約の精神はリスにまで及んでいる事を始めて知った。

松の多い樹林帯を抜けるといきなり、灌木と草地ばかりの若杉山が見下ろしている。振り向くと山麓から続く伯耆大山の山並み、北側には倉吉辺りを隔てて日本海、残念ながら霞で隠岐は見えなかった。南には延々と続く中国山地、柔らかな若葉色を纏った大谷の田畑や高原が眼下にある。まことに凄い眺めである。

オキナグサの保護地らしい草地はあとに回して、ここから先は登山モード、林道の終点から先は山腹の踏み跡を辿る。オキナグサの保護地はこの辺りにも広がってはいるものの、姿は終に見なかった。登山道の周辺では、色の濃いミツバツツジやイワカガミ、始めて見たセンボンヤリとヒメハギは後で知った。草原状の、よく手入れされる場所でなければ無いという、無理もない。雲ひとつ無い青空と絶景の中をゆっくり歩いて若杉山ピーク、岡山県の森林公園にある千軒平に登山者の影がある。

全周の展望が得られる若杉山ピークで風に吹かれて暫しの休息、何処かに椅子は?、と見回すと北に迫り出した大岩がある。残念ながら先行者であるアベックの寝転ぶ姿も見えるではないか。彼らの去るのを待つこと10分ほど、そんな気配はまるで無い。狭い岩場に迫るのも大人気無い、残念ながらまたにしようか、何分にも風のお蔭で涼しくはあっても、陽射しは相当にキツイのだ。

事前情報では、山腹周辺に岩の公園などが有ると云う。途中で分かれた道ではないか?、踏み跡の少ない水平道、更に細くなった辺りは近頃整備したらしい。歩き辛くなった直後に大岩の下に出て、道の代わりに珍妙な仏様?、集落の皆様の参拝道であった。自然物崇拝だと思われるので権現様だろうか?。すごすごと引き返して最大のオキナグサ保護地に行き、その姿を訪ねるけれども草地を吹き抜ける風はつれなかった。

目論見通りに行かないな〜、来年は4月に来ようか。しかし噂に違わぬ大展望には大いに満足であった。駐車地まで歩く途中で単独が二人、何れも関東ナンバーの方々であった。同じ悲哀を味わう事になるのかな?。


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