■ 多紀アルプス・小金ガ岳〜三岳
・・・・2009年10月18日
2009.10.19

彼方此方の山の端が色づき始めると、遠くの山は更に遠のく。大峰も台高も、比良でさえ倍近くも行き難い山域になる。

4月から始まった高速道路1000円の措置は、これに拍車をかけ、なんぼ有難い山でも、遠くから思い浮かべて偲ぶのである。

加えて今日は快晴との予報で、懐の具合も併せると、とんでもなく遠いところに思えるのである。

幸いにも、今年はキノコの発生が非常に悪くて、どうでも行きたい山域も無い。兵庫県道12号の道端にならぶ「丹波黒豆」の屋台の多さ、人気の凄まじさに圧倒されながら、登山口の火打ち岩集落に着いた。

秋色が溢れ、僅かな光でも明るい集落に、僅かに雑音が起こるとすれば、我々ハイカーの車が、あぜ道程の狭い道を、この先のオオタワ目指して、家の影に消えて行く光景から起こるのである。

立派なグランド前に懸かる橋の上に車を置いた。少し戻って小金ガ口から真新しい橋を渡り、少し聞いたことのある、自然食だったか、お店の看板に沿って歩いた。橋も自前のものらしく、稲刈りを終えた田圃の傍にはやはり自前のササニシキ、の看板が立ち並んでいる。牛舎らしい長屋もあるようなので、牛肉もそうなんやろか。

左に登山口の看板があり、アケボノソウの咲く中を抜け、細い谷川に沿った杉の林の中を登っていく。川底には泥が溜まって美しくはない。杉の林を抜けると藪っぽい二次林に出る。少し休みを入れている間、物見高いヤマガラが傍の梢を行ったりきたり。谷を離れて尾根が近づくと、1000年ほど前にあったらしい静願寺跡がある。

大峰の竜願寺に対抗して作られた「豪壮」な社寺であったらしいが、今となっては小さな山城か砦跡くらいにしか思われない。

尾根に出て、岩場の多い小金ガ岳を正面に見ながら一旦肩まで下る。恐らくそれ程遠くない昔の道跡を横切り、潅木と赤松の岩場を登る。整備されたところでは、メッキの色も鮮やかな鎖場もあったり、登山道らしい処もあるのだが、必ずしも利用されてはいないようで、違うところに踏み跡がある。何処を登っても、潅木や木の根にしがみ付いて暫く上れば小金ガ岳ピークである。

ピークには二人の男性が休息中、羽毛の落ちたススキの間から北側の展望が中々に良い。西には、谷底から這い上がる三岳の姿があって、800mに満たない空間でありながら、悠々とした空間が広がる。ピークを離れ、岩場が続く北壁に差し掛かると賑やかな一団が目に入った。オオタワからの一団で、岩場に差しか掛かったところである。

岩場の中ほどまで進み、賑やかな一団を待った。一際高い岩の上に立ってみた。どうやらこの位はこなせる位にはなったらしい。先頭が顔を出して、30名が続くと云う。30人程になると、伸びきった列を待つのに結構イライラすることもあるのだが、今日はかなり短い間に通り過ぎて行った。岩場を抜け檜の林を抜けたオオタワには、車がざっと30〜40台。

コンクリートの円卓を囲んで食事中のハイカーの傍を抜け、今まさに登らんとするご夫婦を置いて、長々と続く階段に一歩足を踏み出した。見上げた急斜面に続く階段は何時果てるとも知れない。先のご夫婦に、見えざる手で背中を押して貰わなければ、たちどころに小休止を繰り返す軟弱ものである。あ〜しかし実際しんどい、流れる汗は今日一番。

緩斜面からは赤い実を沢山着けたソヨゴかウラジロの木が、秋らしい味のある風景の中にある。ピークの祠の傍の岩場に腰掛て食べる、すっぱいみかんが美味しいのである。休むうち、件のご夫婦も到着し、ここがピークかと仰る。樹林の中の鉄塔を指差すと、楽しそうに去っていった。結構な健脚の持ち主である。

三岳からの下りでは、お気に入りの岩のテラスから、下界に広がる木々の波を見下ろすのは快感である。道の傍には古い祠も幾つかあって、1000年まえの賑わいを感じることができそうな気がするのも、秋のなせる業であろう。



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