■ 播磨・千ヶ峰
・・・・2019年02月23日
2019.2.24

三谷コースはちょうど1年前、雪のチラつく4月に登っている。今日は未だ2月、しかし見渡したところ白いものは全く無い、小雨の降る、日差しも洩れる風の強い日だ。広い駐車地に他に車が1台、ときおり強い雨の降る荒れた天気、暫く様子を伺う間に隣に黒い車が止まった。思い切って外に出た身体を強い風が襲う。忽ち身体は冷え、渓谷に沿って登る急坂に、太腿の筋肉は痛いほど緊張している。

右岸から、雌滝を前にして左岸に移り、暫くゴロゴロ石の途を登ると明るい岩場に出て、日差しがあると風が無くて温かい。身体も温まって来た頃だから、雄滝や景色などを楽しむ余裕も出てくる。雪は無くとも流石に未だ2月、桜の咲く頃にはあったエンレイソウなどの着いた流れの中の岩の上には何も無い。緑なす苔の上には、真っ赤なヤブツバキの落花を見るだけである。

明るい渓谷を離れると暗い植林帯に入る。只に暗いだけでは無くかなり斜度もキツい。が、ここをやり過ごすと殆ど崖といえる程の急坂が待っている。岩座神(いざりがみ)コースの出合い辺りまで登るとやっと傾斜も緩んできて、振り返っても崖の下の登山道はまるで見えない。暗い植林地の急坂を登るだけの岩座神コースに比べたら、三谷コースは明るくて渓谷は美しい。

そもそも、岩座神などと呼ばれる地名は、七不思議コースにあった巨大な奇岩に因んだものであろうと思われ、七不思議コースを辿らなければ、コースの醍醐味は殆ど消失してしまう。が、夏場になると恐ろしい守り神が多数出没するらしく、そんな事を云っている余地は無いだろう。何分にも、触らぬ神を旨としている。

山頂手前までは明るい緩斜面が続き、風は音ばかりで、流れる雲間からお日様も顔を出す。山頂が近くなると再び傾斜がきつくなり、深く抉れた古い途に代わって、南側斜面に新しい黒ぐろとした途を辿る。横に止めた黒い車の単独男性が追い抜いて行った。その後ろ姿は妙に寂しい。

強い風の抜ける山頂には二人、最初に登って来られた男性は、ベンチに腰掛け食事中である。そばの灌木の葉やススキの穂に、白く霧氷が着く気温だ。こんなところは直ちにさよならをしたい。見れば、北の尾根コースに残る雪庇の道に風が少ない。100m程降って行って見ると、それ程も静かでは無いし相変わらず寒い。

再び山頂に戻ると何方も去った後、下山に入ったところでお若い団体さんが登って来られた。やや間をあけた最後尾の女性の顔に苦悶の色が現れていた。対象的に、直ぐ下でお会いした長靴・ピンクのシャツのおばさま、前回もピンクだったと記憶している、はどこまでも明るい。年100回の登頂は達成されたらしい、人生の達人の部類だと思われる。

渓谷の手前で下山していく彼女と再び遭遇、哀しい事に、その顔の何処にも、あるべき余裕が感じられ無い、達人は難しいものなのだ。隣の黒い車の男性は未だ戻っていない、七不思議コースで周回するらしい。


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