■ 中国山地・那岐山
・・・・2019年01月13日
2019.1.14

冬の那岐山は始めてお目にかかる。とは云え、3月、直登から東に下降し林道を経てBコースで頂上まで歩いた際にも雪はあった。雪の那岐山は2回目である。自衛隊演習地入口に車が数台、歩き出したばかりの方もおられるし準備中の方も数人、駐車地に余地が無くなったと判断して最後尾に付け、ところへ単独のおば様が着いて「上は一杯?」、確認は出来ていない旨告げると駐車地に向かわれた。

歩き出して直ぐの下の駐車地に差し掛かると、今入った車で一杯になったところであった。おば様はと見ると、更に登った道脇の平坦地に止め準備中、逞しい方である。未だ歩かないBコースから始めるべく林道を詰め、登山道に入り更にCコースと別れて心細い橋を渡ると谷の左岸にルートが続く。思った様に、石ゴロゴロのCコースより歩きやすい、が谷に転げ落ちるリスクが少し伴うコースである。暫く歩くと雪が出てきた。雪と云っても半ば凍りついた雪である。

陽は午前中はまず差さないだろう暗い道の先に、6人のパーティーの背中が見えた。賑やかなパーティーからは、絶えず笑い声が上り、それ程も面白い事の少ない道程では、些か不自然と云わざるを得ない。着かず離れず最後尾に付け、やがて小隊は止まって小休止、お先にどうぞと先を空けられたところは、やっと空が見え明るくなったところだ。

明るくなると同時に積雪も増え、踏跡の残る急斜面は凍り付いて滑る。一頻り斜面を登ると緩斜面に出た。ここからは山腹を横切る林道の痕跡が見え、直登のあと降ってきた尾根も見え出した。林道Bコース出合いは直ぐそこだ。雪が出始めて直ぐ、少ない雪にも拘らず、根気良くスノーシューの痕跡を残すハイカーの気力には感心していた。スノーシューの方はAコース目指して積雪の更に増えた谷に爪痕を残している。

同じところでアイゼン装着中の男性を見送った。アイゼンは重くて膝に悪い。ひと上りで林道に出て、トレースは全てBコースに続いている。今の登りで未だ歩かない登山道は無くなった、が一番きつそうなAコースは降ったばかりで登ってはいない。これを残して再びBコースでは褒められない。Aコースは雪の林道を歩けば直ぐのところだ。林道の雪は2〜30センチ、表面はクラストして甚だ重い。誰も踏まないから動物の足跡が綺麗に残っている。消えそうな小さな足跡はウサギに違い無い。小さくてもウサギの特徴は良く留めている。

雪の林道を30分、Aコースに向かった谷を詰めた足跡と合流した。スノーシューも含まれ、雪の上から北東の山々、後山や氷ノ山辺りを眺めたらしい。ところがそこは雪の上に残る風紋が示すように、痛いほど冷たい強い風の抜ける場所であった。Aコースは直線的なコースでくの字は殆ど無い。両側に隈笹の密生する中を登るのはBコースと同等、今日は雪に隠れ、その上をスノーシューが歩いている。ほぼ登りきった8合目辺りの雪原は広く、枯れ木の混じる原生の趣がある場所だ。テント泊ならこの辺りが良い。

8合目を過ぎると木々の枝先が白い、霧氷が出てきた。風が頬に当るとここでも痛い、左下には日差しに温まる美作の国が広がっている。聞き覚えのある笑い声に前の方を伺うと、ソリ遊びに昂じるハイカーが6人、思い起こせば、ザックの背後にあったのはヒップソリ、コースを誤れば美作の街に飛んで行きそうなロケーションだ。

那岐山ピークの人影は疎ら、旧ピークも同様に人影が少ない。ピークより数メートル低い辺りの南斜面の雪を固めて昼食休息、そうしている間にも雪がチラつく。降りは全てBコースを歩いた。圧雪だけで無く、日差しで融けた雪も制動が効かず、泥濘も出来て始末に悪い。おば様などは早くに降りて来られた様子で、泥に埋まった轍の跡だけを残しておられた。


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