■ 中国山地・後山
・・・・2018年11月11日
2018.11.11

板馬見渓谷からの後山は、渓流に山桜の花びらの舞う頃に登っている。今日の渓谷は、燃えるような紅葉で、渓谷全体が浮き上がるように明るい。登るに伴い、既に葉を落とした樹木が多く見られる。ところが、樹木の下辺りは、明るく柔らかい落ち葉で埋め尽くされ、全体として見れば、紅葉の最中と云えるだろう。いささか冷たそうにも見える澄んだ流れの中でさえ、差し込んだばかりの陽光に煌めく紅葉のお陰で、静かで穏やかに見えてくる。

やっと補修の済んだらしい林道を、役行者像?の前まで車で登り、ここから歩く事にした。これで往復1時間以上を節約出来る。何しろ、17時には暗くなるこの頃、少しでも早く降る事が必要な季節である。この先から、渓谷に沿った登山道が始まり、林道に戻って再び沢沿いに道が続く。再び林道に乗ったところが駐車場で林道終点、ここまで車で登ればさらに30分の短縮、が割れ石のリスクもあるから、今日は登山道の始点まで。

空気は相当に冷たい筈で、が、歩き始めると以外に暑い。結界を抜け、滝の前を通って沢を越え、陽射しの中の木製階段を歩くと汗が溢れる。風が無いのだ。葉の少なくなった樹木が多い中、僅かに残った楓やシデは見事であった。岩場を越え、大岩小岩のゴロゴロする谷に入ると葉を付けた樹木は針葉樹ばかり、だが林床は寧ろ明るく、暖色に富んだ光景が広がっていた。

平成の大馬鹿門のオゴシキ山分岐を過ぎ、今日は一般ルートで尾根まで登る。見上げた山腹辺りから流れ落ちる小さな流れ、そーめん滝と云うらしい。行者コースと別れ、崖に続く、踏み跡程度のつづら折れの道を登る。一般コースとは云え、サポートの無いこれ程の急勾配はそうあるまい。が良いところもある、休むに適当な小広い場所が無いからただ上を目指して登るより無い。

お陰で行動時間相当の高度を稼げた。昼の短い時期に相応しい。南尾根に登ると美作方面が見える、生憎今日はガスが多い。登った直後に大岩を登る。この場面ばかりなら、一流の登山に見えなくもない。大岩を越えると薄い根曲がり竹が生えるブナ林が続き、1250のピークを踏んで、一旦降って後山へ向う。左手には舟木山から後山に続く、緑の尾根が伸びやかに続いている。赤い実だけが残る木はナナカマドかな。

後山ピークはなかなか近くならない、近づけば逃げるピークだ。暑い笹薮を抜け、ブルーシートが見えて来ると後山ピーク、美作方面は相変わらずガス、北東の秀麗な山は三室山。シーズンを前にした千種は明るい。尾根からアベックが到着した。狭いピークに腰掛ける場所は一箇所のみ、いわんや木陰の出来る場所は更に狭い。汗も引いたし、オゴシキ山の平成の大馬鹿門を見に行こう。

後山からオゴシキ山へは距離はあっても降るだけ、登る事を思えば何の事は無い。倒木なども綺麗に片付けて頂き、笹薮の道も楽に歩ける。ただ、辺りの木に葉がなく、細いものが多くてやや寂しい光景である。大馬鹿門から見下ろした谷筋は燃えていた。紅葉狩りの方々には大いに満足であったに違いない。

オゴシキ山からはほぼ山腹を横切るように歩く。一部に残された広いブナ林の明るさもまた素晴らしい。明るさに慣れた目に、陽射しの届かない渓谷は寂しかった。この季節、南に傾いた陽光は、午後には尾根に隠れてしまい、谷は日暮れのように暗い。まだ13時を過ぎたばかりでこうだから、これからの山は忙しくなるばかり。


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