■ 京都北山・中山谷山〜五波峠
・・・・2009年10月04日
2009.10.5

雨上がりの週末(私には日曜日は週末である)は快晴だ。田歌から林道ビレッジラインを少し遡った谷川傍の広い駐車エリアに車を止めた。

白いアケボノソウや青いアキチョウジの花が盛りではあるのだが、潤いに欠ける。あれだけ雨が降ったにも拘わらず、草花の上には朝露の一つもなく、狭い谷底に日差しが届いても、暑いばかりで秋めいた清々しさが感じられない。

谷川の流れにも雨後の気配は何も無い。8月9月の降雨量は平年の4%であったそうで、相当に乾いた状況であったのだ。

日差しはまだまだ十分暑いなか、少し林道を戻って小さな谷の右側に取り付いた。春には尾根一面にイワウチワの涼しげな緑が続き、赤い花が続く、気持ちの良い尾根である。

その先は、嘗ては厳しい笹薮に覆われた平地が広がっていたのだが、最近では完全に枯野原と化してダニが多くて残念である。

足元の松葉や枯れ葉が音を立てて砕け、やはり相当に乾いた状況である。尾根に上がると涼しい風も抜け、何より、濡れた背中が直ぐに乾くのは驚くばかり。緩い斜面が終わると再び勾配がきつくなり、先の枯れ野原に乗る。中央に獣道があり歩きやすい。

抜けると谷の源頭部に出て、風が抜けるので何時も寒い思いをする。二次林ではあるが、綺麗な林が山肌を覆っていて気持ちが良い。

道々の笹はどこも同じように枯れているので、枝先のダニには十分注意が必要だ。更に二箇所ほどを上り詰めるとゆったりした尾根に出る。春先に沢山花を付けていたウラジロノキには熟して赤い実が今にも落ちそうである。

味は、リンゴとナシの中間位で甘い。至るところに落ちているのに、熊棚は見つからない。よほど食べ物に困っていないのだろう。

中山谷山ピークに人影はない。天狗の辺りと同様、どうやら芦生ブームは終わったようだと判断するのは早計であろうか。東に下る尾根の踏み跡、これも芦生ブーム以前には無かったものだが、ここにも新しい踏跡の痕跡は見られないのだ。

この尾根を下ると坂谷支流である。途中は杉の多い暗い厳しい斜面を下ることになるが、谷底は安定して、緩い流れがあり、適当なところで這い上がると五波峠からのルートに出会う。

立ち枯れた太いミズナラの傍を下ると、突然、ビエー・ビエーと割合に太いしわがれた声が谷に響いた。これは小熊の鳴き声に違いなく、恐らく人の足音に反応したに違いない。こちらも大きな声を挙げ、笛を吹いたが、鳴き声はなかなか止まない。母熊は如何したのだろう。

暫く足を休めて聞き耳を立てる裡に、鳴き声は止み、谷間は静かになった。がしかし、谷の周囲は厳しい斜面で、子連れの熊に遭っても逃げるところがない。恐らくは向かいの尾根に逃げたとは思うのだが、上流に逃げていたらと考えると、やっぱり恐ろしい。

で、下ってきた斜面を再び登り返すことにしたのである。子連れとは遭いたくないですからね。

中山谷山ピークからは色々な下山ルートがある。展望のあるスーパー林道を歩くべく、谷に広がる素晴らしいブナの森を見下ろしながら、五波峠までの道を歩いた。今日のものに違いない踏み跡が一つ残っていた。峠には車が四台、人影は無い。

長い林道脇にはススキがなみうち、木陰の中はひんやりして、秋本番に入るらしいのだが、夏から秋口に発生するキノコはどうしたろう。


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