■ 中国山地・岡山県立森林公園
・・・・2018年09月01日
2018.9.2

森林公園に着く頃には小雨模様、車は1台も無く暗い駐車場、カッパと傘とスパッツを着けているところへバスが1台、NHK米子放送局が主催するトレッキング講習らしい。元気の良い方々が、勢い良く飛び出て来ては、管理棟に消えて行った。後を追いかけ管理棟の前、お二人程は、無料のストックの選定中、他の方々の姿が無い。西側の展望台から尾根沿いを歩かれる予定なら、再び相まみえる事も無さそうだ。尾根なら少々の雨でも不安が無い。

管理棟前を抜け、増水した谷川を2箇所、スパッツはこの為に着けたもの、少々の水かさでは何とも無い。県境尾根への急登を前にして、右の谷コースへ、標識には熊押し滝と書いてある。只でも暗い雨天、谷底はガスが掛かって視界が悪い。熊の出没に備えて笛と鈴を着けて歩いた。強い瀬音は鈴よりうるさい、笛の音は谷に木霊して100mは安心して歩ける。樹林の中の熊押し滝は4段、50m程の滝で、水の多い今日は特に立派に見える。花と見紛う、ちょっと怖い毒々しい虫は、ルリタテハの幼虫であった。ユリ科の葉だけを食べるらしい。

滝を巻くように上流に移動、小尾根に乗るとブナの巨木の森に出た。ここは標高も高く幾らか明るい。雨は殆ど上がってしまって、只ガスが流れて来ると、目の前の巨木さえ霞んでしまう。滴る汗に気温は?、と見ると17℃、昨日までの猛暑を思えば、これは殆ど僥倖に等しい。明るいピークを降ると空の見えない暗い森に着いた、奥ブナの平。途中、腐ったトンビマイタケがアチラコチラ、マイタケの姿は遂に見ない。

ここから一旦、県境尾根に出る事にして、尾根周りで東の端のスズのコ平を周回する。適当にコースを外れる事は殆ど不可能、密生する千島笹が許してくれない。従って、コースに沿って一旦降り、谷川を徒渉して尾根に出る。気温は低くてもカッパを着た体は暑い。谷川の側で、大慌てで川に隠れるサンショウウオを見た。種類は分からない、がオオダイサンショウウオの様に、明るい色の皮膚では無かった、乏しい光のせいでは無かろう。

途中、大きな大和杉を見た、あれが公園の云う大杉と呼ばれるものだと思う。尾根は兎に角明るい、霧が流れようが晴れようが、展望の殆ど無い尾根でも、明るいとホットする。ホットしたところでエネルギー補給、梢ではソウシチョウの鳴き声が忙しい。背を越える千島笹の中の尾根道を30分程、1080mのスズのコ平はキャンプ適地と云える程、素晴らしいピークであった。全周の展望、岡山と鳥取に開けた地形、平坦で伸びやかなピークでの一泊は魅力的だ。ただし、園内全域キャンプ、焚火は禁止である、残念。

行ってみたかった、近くのピーク『霧ヶ峰』へは到底行けるところでは無い。繁茂する千島笹は物凄い。ここから30分程降ると奥ブナの平に戻る。最後に、東の端のコースを歩いて6本杉に至る道を歩いた。当然ながら登りは少なく降りが多い。そんな暗い道の先の、杉とカラ松に覆われた森の6本杉は、ちょっとした驚きであった。

道に出る手前で、タタラ遺跡を見学した。遺跡といっても、金屑を見るばかりで、遺構については識別も難しい。古代から近世に至る長い歴史の中で、こうした奥深い、昼なお暗い山中で製鉄作業に勤しんだ人々がいた事実は、驚きを超えて、畏怖さえ覚えてしまう。山間における妖怪じみた話の多くは、こんな心情を根源にしたものだと思う。管理棟に抜ける、整備された道に溢れる明るさ、が証拠だ。


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