■ 大峰・川合〜日裏山
・・・・2018年07月14日
2018.7.16

役場の駐車場を起点にした登山者の姿、そばには大型バスがとまり、お母さんと幼稚園児が直ぐしたのバンガロー村に向う、が今年は少し違っていて、考えてみると、伴奏が無い。セミの鳴き声が不足している。重いザックを担いてやっと登った集落を見下ろすポイントの鉄塔下、川迫川に水は僅かで、早い時間とはいえ川遊びの人の姿が無い。登山道を行交う人の姿は思いのほか多い。今追い越して行かれた二人組は、中間地点で休息を入れたばかりだ。降ってくる方々の格好は概ねトレイルランスタイル、ここでも登山スタイルより人気がある。

流行りに鈍感な者は、大きなザック、重い靴、長袖の上下で大汗になって登って行く。と、ここで考えた、Tシャツと肌着のシャツに違いは殆ど無い、行儀は悪いが肌着で登ればさぞ涼しかろう。すでに汗に濡れた長袖を脱いでシャツになった。なんと、これが大正解で、林床を拔ける乾いた冷たい風の冷却効果は想像以上、涼しい。パンツは流石にためらわれるし、虫への備えは必要だ。とは言いながら、汗が収まるわけではなく、あるき始めるとボロボロ溢れる。何しろ道が長い。

良い風の抜ける尾根に出て、ここでも小休止、お母さんと小学生くらいの子が元気良く登って行った。彼らの背に重そうな物は何もない。テン泊組は極めつけで少数派。ただし、川合からのロングコースに限ったはなしだ。次に見えて来たのは坪内林道出合近くの鉄塔で、ここまで辿り着いたら1/4は越えるだろう、と言う訳で小休止。今日の大峰の風は勿体無いほど気持ちが良い。これを味わってこそ大峰を歩く価値がある。見渡せば、まだまだ人工林が大勢を占める地点であった。

少し歩くと坪内林道、これを逍遥すると坪内逍遥、となる。大きく崩壊したこの林道が、再び利用される事はあるのだろうか?、嘗ての乗合バス停車場の看板は、そうした現状に関係なく、往時のままの姿を留めている。そんな光景を目の前にして、腹が減っては戦ができぬ、とここでエネルギー補給、帰路をショートカットした登山者が、日盛の巨大林道を降って来られた。さぞ暑い事だろう。風の拔ける木陰から、気持ちだけ声援を送らせて貰った。

帰りはショートカットはあり得るにしても、往路くらいは歩かねば、と取り付いたルートは厳しかった。150ばかり登って降って、これが応えた。応えたので、栃尾辻で小休止。ここまで5キロ、残した距離は約5キロほど、小休止と云いながら、やや長めの休息ばかり、行程こそが登山と云いつつも、そろそろ到着時間が気に掛かる。次は熊渡り出合までは頑張ろう。天女の舞までの厳しい坂道、加えて長めのコース設定、そこはかの知れない崖を横切り、これなら尾根南側を巻く意味は無いではないか?、北側ルートに古い踏み跡も残っているし、帰りは北側を歩いてやろう。苦しいとつい、無駄なボヤキが出てしまう。帰りも南側コースを歩いたのは言うまでもない。

熊渡り出合で小休止、この辺りから、本気で歩かないと日が暮れる。急ぎ足にモードチェンジ、しかし肩に食い込む重みは変わらない。重い煩悩を背負う行程は苦しいものだ。頂仙岳を巻くようになって初めて着いた様な気になった。狼平に降れば楽だろう、がやはり煩悩は強かった。夕方だと云うのに、ルリビタキが盛んに囀る、ここは日裏山だ。日裏山を越え、大峰3山の肩から八剣谷に一気に下降、沢の片隅に今日の野営地を求め、小枝を集めて薪にして、冷えるべきものは冷やし温めるものは温めて、腰を降ろして見上げた空に、はや一番星が煌めいていた。


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