■ 中国山地・後山
・・・・2018年04月21日
2018.4.22

板場見渓谷入口で標高は370、目指す後山は1344、およそ1000mの標高差とするためには、渓谷に沿う林道は歩く必要がある。渓谷に入ると直ぐ、行者用の山小屋があって、綺麗な流れの岸のヤマブキは満開だ。林道の斜度はそれほどもなく、史跡などを探して歩くと苦痛は無い。下界では散ってしまった山桜は、登るに連れて生気が戻り、登山口の駐車場の前辺りでは、花びらを浮かべた谷水が美しい。

かなり広めの駐車場には2台の車があり、快晴の割には人気が無い。登山道に入ると直ぐ、小さな小屋の中を抜けるのは大峰と同じで、異世界への入口、所謂結界を表したものだと思われる。一部には現在も残る女人禁制の山であったらしい。はらはらと桜の花びらの舞う結界を、2ヶ所抜けると滝に出る。本格的な行場を予感させる木の階段が、谷を超えた岩場に続いている。

岩場の上から見た裸の山腹に、ちょうど見頃の山桜。岩場を越えると行場があった。案内によれば、岩場の登り降りが行らしく、時には落ちる人もあったとか、凡そ10m程の岩である。不動明王が安置された岩屋があった。明るくて広い谷の水はあくまで清澄、しかし足場の悪い斜度の出てきた道は暑かった。疲れが出てくる頃に分岐道、左へは「平成之大馬鹿門」に続くコースだ。

ここで降りのお二人と出会い、残りは車1台のみ。このコースは後山の東尾根にある小ピーク・オゴシキ山へと続く山腹のルート、楽な道程の予想に反して、分岐の直後からほぼ垂直に岩場を超える。樹林が切れると期待した山腹ルート、未だ葉の出ない山腹は明るく、ハルリンドウの咲くブナの枯葉の道である。狭い登山道に降り積もる、良く滑る枯葉にさえ注意して歩けば、周辺山河への展望の開けたコース、三室山、植松山が右の尾根に、雪の残る氷ノ山は背後にある。

問題の「平成之大馬鹿門」の手前で単独男性が降って行く。件の門は、尾根上の小ピーク、オゴシキ山の上の6m程の角柱の塔、谷を隔てた北側の山の中央辺りにぼんやり見えるもう片方を合わせて、巨大な門を表すとか。何方が創られたのか、重そうなブロックを積み上げた塔だ。のみならず、ここからの眺望も素晴らしかった。側のブナは今が花盛り、冬芽の芽鱗も風に靡いて、ザックを下ろして暫くぼんやり、後山山頂までは標高差250m。

折からの陽射し、笹薮で届かぬ風、思わぬ大汗になった30分、シートに覆われた山頂の祠の前は無人であった。木の芽を啄むヤマガラのカップルの他、夏鳥の鳴き声が響く。誰もいない快晴の山頂から望む舟木山への尾根は、柔らかい光芒に包まれた別世界。遠くの景色がよく見えるのは、何処でも同じ事らしい。

昼食の後は笹薮を南へ降り、ロープ場のあるらしい行者コースを避けた一般コース。1253のピークから東に伸びる尾根に踏み跡は続く。ふと見た北側斜面の一面に咲くバイカオウレン、植物の好みは分からない。高度感のある岩場を越えるところが一箇所、急勾配の北側斜面をウネウネと降り、思いのほか呆気無く谷底に着いた。温かい西日に覆われた谷は広く明るく、山桜の花びらの舞う様子は別世界、分かっていた無人の登山口は、何故か寂しい。残した林道歩きは約1時間、ほとぼりを冷ますには丁度良い


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