■ 中国山地・那岐山
・・・・2018年03月25日
2018.3.25

随分温かくなる様な予報に反して、少なくとも朝に限れば冬の様な気温、そんな中でも登山者の車は最上部の駐車場目指して登って行く。下の駐車場に車を止めて、歩き出したところに後続が出来た。地元の方だと足は早い。道脇の灌木に、黄色い花を見つけた。クロモジかダンコウバイかアブラチャンか、詮議の間に行くだろうと期待した後続は、同じ様に道端の観察に立ち止まっておられる。

混み合う最上部の駐車場を抜け登山口まで、この先の登山道はまるで川原の様な歩き辛い道、林道を詰めても同じなら林道を歩きたい。もちろん距離の長くなる事は承知である。3コースある登山道の、未踏のBコースを歩く予定だ。汗が滲む頃にCコースの分岐、林道を歩けば、何れBコースに出合う筈であった、がこれが間違い。林道は直ぐに終わり、右手に城跡へのコースが谷川に降っている。谷川に降って考えた、これを辿ってAコースの終わり辺りに出てしまったら面白く無い、見れば谷川に沿った踏み跡がある、これを登れば登山道に出合うだろう。

川沿いの道は直ぐに、滝を超えたところで、間伐材の放置された、見上げる様な急斜面を前にして消えてしまった。世間では、陽射しも出てきて春風が気持ち良く感じる時刻、ところが、那岐山南側の植林地を吹き上げる風は強く冷たい。纏まった雪こそ既に無いものの、杉の枯れ葉の間に未だ雪が残る。両側はかなり深い谷、このままピークまで登ってやろうか。とここで思い出すのがピーク辺りの濃い笹薮、笹の薮漕ぎだけは是非したくない。せっせと登ったお陰で斜度も緩み、杉木立の間から見える稜線辺りの岩場まであとひと登り。

薄くなった杉の木の間に、笹の葉が行く手を阻む。兎に角コース出合いを探して右手の谷まで高度を下げて、少し登り返して見た暗い山腹、植林の切れる辺りにひょっとして、と登り返してはみても再び笹薮。同じ様に右手の谷に降り、轟々流れる谷川の先は登れる様な斜度では無い。少し登り返して谷を見ると、あら?、水が無い。水は直ぐ下の辺りから湧き出ていた。深い谷はここで切れて、随分穏やかな山腹が広がる。

僅かな踏み跡とテープを拾って出たススキの原、やっと全貌が見え、林道はずっと下方、またも高度を失う事に。林道を暫く右に歩くと登山道に出会った。陽射しの中は暑く、乳酸の溜まった足は上がらない。降りの方と出会う様になり、雪が出てきてやっと山頂尾根、スニーカーを履いた若い女性の足は、雪解けの水に浸かっていた。山頂で暫く休息を容れ、本当は行きたい滝山への道、延々と尾根を辿り尾根に消えて行く1本道は、行けそうで行けない憧れと良く似ている。

前回の登りコースを黙々と降り、大岩に刻まれた文字は「不動明王」、修験道には些か岩場が足りない。下界の気温は高く、駐車場ではスニーカーの女性と連れの男性二人が歓談中。湧き出した水の音がちょろちょろ、響き渡るウグイスの囀り、疲れた登山者の車、静かな午后である。


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