■ 丹波・鷹取山〜愛宕山〜五大山
・・・・2017年12月10日
2017.12.10

2週間前に登った山は五台山、ノコギリ状の尾根を見て、登りたかった山は五大山、名前は似ていてもすっきりしない。今日はやり残した五大山の岩尾根を目指して旧エルム市島、現在は立派な宿泊施設を備えたキャンプ場に車を止めた。想像では、冬枯れの中に蟠る、寂しいキャンプ場の筈であった、が現実のキャンプ場はほぼ満員、枯れた夏草の影に雪が残る季節に拘わらず、大盛況だ。キャンプ場の熱気が伝わったのか、水場にも陽射しがあって明るい。

キャンプ場の中を歩いて、美和峠まで攀じ登る予定であった。山は低いしエリア自体広くは無い、何処から登っても大差あるまい、と考えていた。そんな時、キャンプ場の従業員らしい若い男性が車を止め、「ハイクですか。先週登りましたが、登山道は酷く荒れてますよ!」と忠告する。そんな事は承知だからと、道を詰めて山腹に続く、補助ロープの厳しい斜面に取り付いた。この時既に、美和峠へのコースを外れていた。谷を詰めれば良かったのだが、つい踏み跡を辿ってしまった。

斜度の厳しさに加え、落ち葉の積もる、石の多い硬い山腹はよく滑る。古道のような巡視路を登ると当然ながら鉄塔に着いた。踏み跡は山腹を巻いて次の鉄塔に向かっている。五大山は背後にあって、方向が違う事はよく分かる。左寄りに尾根に登れば峠に近い。斜面に真っ直ぐにコースを取って、出来れば左に振りたいのだ、が左の山腹は藪になってあるき辛い。止むなく登ると岩が出て来た、思いとは裏腹に、右に振って岩を越えるとイノシシが飛び出た。

小さいのが後ろから続く。少ないながら雪も出て来て、何処かで見たような、と飛び出たピークは鷹取山、別名「氷上の槍」、下からよく見えたピークだった。ピークで少し休みを入れ、未だ秋の名残のあった前回に比べ、すっかり冬景色に変わった尾根を降って美和峠、香ばしい匂いを放つタカノツメの黄色い落ち葉を踏んで、愈々愛宕山に差し掛かった。ここに愛宕神社があると言う事は、火事に悩む事が多々あった事を想像させる。

しかし崖の上に作る必要は無かったのではないか、周囲は全て、切り立った岩場である。当然登山道も崖、お助けロープがあるとは云え、厳しく細い、滑る岩に踏み跡は続く。木の根が少ないのが心細い。辿り着いた神社はひっそりとして、時に手入れが有るらしく、整然とした小さな社であった。ここからも、滑ると取り返しの付かない岩尾根を歩き、やや歩き易くなったところにエルム市島の看板があった。

ヒカゲツツジが繁茂する岩尾根を登って五大山、昼食には寒すぎる風、いつしか陽射しもすっかり消えて、黒雲の間から吹く風は冬のモノだ。此処で降りのコースは2つあった。目の前の2時間コースか先程のエルム市島の看板コース、2時間に道迷い1時間はやや剣呑だ、ここは安定した降りを期待して、エルム市島コースを降ろう。始めは荒れた登山道でも、道筋だけはよく分かった。下手なところを降ると崖などがある山、ルートだけで有り難い。藪の中から、小さな鳴き声が聞こえて来て、移動とともに着いてくる。どうやら小鹿の鳴き声らしい。この先長く着いて来て、小尾根を登ったり降ったりする姿を見ただろう、灌木の中には、春の花であるべき満開の、ヒカゲツツジの花もあった。

ルートらしい踏み跡が消え、鉄塔が出て来たときは助かった。あとは巡視路を降れば良い。ここで遅いお昼でエネルギー補給、目の前に、未だ現役といっても良い遊歩道の道標があった。さあ、あとは降るのみ、とここからが迷い道、遊歩道は細尾根の途中で跡形も無い、谷に降れば巨大な岩場は滝を想像させ、道がなければ万事休す、巡視路もまた酷く荒れた谷に降っている。右往左往した挙句、安全第一で巡視路を降り、植林地であることから降る事の可能な谷と判断して、道無き大荒れの谷底を降って林道に出た。大汗をかいた一日だった。


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